トヨタはいつ決断するのか 〜水素自動車から電気自動車へ
2017/04/24
この記事は2015年12月に書きましたが、1年かかってようやくトヨタが2020年のEV量産を「検討」というニュースが入ってきました。この記事も貢献できたことを嬉しく思います。決断は遅きに失していますし、電池の確保(とくにリチウムの確保)は困難を極めるでしょうが、体力がある今、手を打つことにしたのは正解です。才能の欠如したデザイン部隊の理論(「初めは違和感のあるぐらいでないとダメ」)に翻弄されている問題が同時に解決すれば、トヨタは生き残れると思います。頑張れトヨタ(2016.11.7追記)
ポルシェが4人乗りの電気スポーツカーを2020年までに発売すると発表しましたね。水平対向エンジン命のあのポルシェがとうとうエンジンのない電気自動車(EV)を開発、ということで時代も変わったなぁと感じます。
http://response.jp/article/2015/12/06/265559.html
突然のディーゼルの終焉により、世界の潮流が変わった
ポルシェの親会社のフォルクスワーゲン(VW)は、ディーゼルエンジンに関する大規模な不正発覚を受けて、(クリーン)ディーゼルを諦めるに至りました。そのぐらい、ディーゼルに対するイメージはほぼ完璧に毀損されてしまいました。もう、回復することは困難なのです(これに関して興味のおありの方は文末をご覧ください)。
起死回生の手段として、「プラグインハイブリッドに舵を切る」という宣言を大々的にしました。プラグインハイブリッドというのは、電気自動車として数十キロ走れて、あとはエンジンとモーターの協調で走る車のことです。全く異なる技術を前面にだすことで、「完全に変わった会社」を演出する必要があったのでしょう。
他方、子会社で、スポーツカーメーカーとしてのポルシェは、「スポーツハイブリッド」を持っていますが、それだけの車種展開は新鮮味に欠けます。そこで Pure EV(100%電気自動車)を クリーン技術のシンボルとして導入しようというわけです。EVは充電時間が遅いことが欠点だと長らく言われてきましたが、従来の400Vを遥かに超えた800V充電システムを開発し、充電時間を15分程度に短縮してこの欠点を払拭しようというわけです。ドイツ中のアウトバーンに、そして欧州に、800Vシステムを設置するつもりなのでしょう。
まったく魅力の無い水素自動車(FCV)
トヨタはどうするのでしょうか。ご存知のようにトヨタは、先進性のアピールとして、水素自動車(燃料電池自動車;FCV)を中央に据えています。それで本当に良いのでしょうか。
先日の「ディーゼル終焉事件」のために、現時点でこそハイブリッドが有利となりましたが、実はその次のステージへの移行が早くなってしまったという意味では、本当に次のステージの主役が水素でいいのかどうかということについて、認識を新たにすべきときが「急にやってき(てしまっ)た」のです。
水素自動車・・・これはユーザーの目線からすると、まったくなんにも魅力の無い車です。まずパワーがしょぼい。ですから電気自動車(モーター)の俊敏性が生きない。そしてなにより・・・
見事に書かれてしまっている水素自動車の欠点
燃料費が高いのです。これは先日、NISSANのディーラーでみたリーフの説明資料です。
燃料電池車(FCV)と書かれている真ん中の列が、水素自動車です。燃料費はとても高くて、ガソリンと一緒です。この日産の説明資料では、電気自動車200円、ハイブリッド車600円、普通のガゾリン車1000円、そして水素自動車も1000円です。
おまけに、水素ステーションはとんでもなく費用がかかり、急速に増えることはほぼ絶望的です。
パワーもないので、クリーンな車に乗っている誇りだけ。プリウスなら、価格が少し高くても、まぁガソリン使わない(から購入後は安い)というメリットがあります。でも水素自動車は、ガソリンと同じだけ燃料費がかかり、燃料補給にも一苦労。こんな自動車にどうして乗り換えるというのでしょうか。
電気自動車(EV; Electrical Vehicle エレクトリカル・ビークル)は、充電のことが欠点だと言われていますが、しかし今は全国に6000台も急速充電器があり、ガソリンスタンド(GS)数の1/5近くに達しています。意外に多い!そして、どんどん増えています。
そのうえ、自宅充電器はおそらく5万台ほどもあり、GSの数より多いのです。EVのユーザー(の多く)は、自分専用の充電器が自宅にあり、その上に、外に6000台もあるのです。言い換えれば、自分の家にGSがあるのと同じです。外でしか燃料補給できないガソリン車とはそもそも状況が異なるわけですからGSの数と単純に比較するのもナンセンスなのですね。
以下は、東京、および地方都市におけるCHAdeMO急速充電器の整備状況です(EVsmartアプリからの転用)。すごい数なのがわかりますね。ちなみに、青は日産、赤は三菱が提供しています。トヨタはプリウスPHVも出しているのに、2015年12月現在で、アイコンすらなく、まったく急速充電器網に貢献していないことが分かります。新型PHV発表をして売れたら、これら充電器は混むことになりますが、こういったインフラにタダ乗りせず、相応の責任を果たしてくれることを望みます。
えっ、水素? 自宅で補給できないからいちいち外に行かないとならないし、外にもほとんどスタンドがないんですよ。おまけに水素がなくなったり、営業が昼だけだったりします。
国沢光宏さんブログ「水素ステーションやる気無し! 燃料電池車の普及に暗雲」
電池の性能は毎年6%アップしています。ランニングコストが安いのはとても魅力的で、自宅充電でほぼ完結する人なら、とりわけその恩恵に与(あずか)れます。
・最高のアドバンテージ:俊敏性(とくにゼロスタートの加速性能)
・次のアドバンテージ:ランニングコストが安い
とくに「出だしの加速性能」については、もう相当な人が気づいていると思いますが、どうやってもガソリンエンジン車ではかないません。「臭い排気ガスがでない*、うるさい排気音もでない」という事実が、加速時の心理的な差をさらに広げています。スマートにシュッと加速。
この動画の中に象徴的なシーンがでてきます。これは排気管(マフラー)のアップ。ドライバーはアクセルを空ぶかし(レーシング)して、発進に備えます。往時はカッコ良く、純粋に胸が踊りましたが・・・
参入障壁としての水素自動車
堀江貴文氏は、以前の投稿で、「FCVなんてのはトヨタの参入障壁作りに他ならず、税金を投入する社会的意義はない。むしろ害悪でしかない」と述べています。
複雑なシステムを持つ水素自動車が「参入障壁」になるのは本当です。もし、これが機能するならば、部品メーカーを守ろうとするトヨタの態度は理解できるかもしれません。
しかし、この間のスキャンダルにより、世の中は急速に次のステップに動いてしまいました。
このまま自然な流れで行けば、EVに行き着いてしまいます。みんなが水素自動車に向かって(関心をもって)くれなければ、「参入障壁」はなんら機能しないことになります。最終的には深い傷を負うことでしょう。もちろん部品メーカーも守らなくてはならない。しかし。
・・・トヨタはいつ決断するのでしょうか。
*臭い排気ガスがでない:
「ディーゼル終焉事件」の最大の「功名」は、主に都市部においてディーゼルエンジンから排出されるガスが、CO2に限らないということをはっきりと認識させてくれたことにあります。CO2の話になると、「温暖化しているのか、していなのか」の論争になりますが、問題はそこ(だけ)ではなかった訳です。
実は、喘息などの原因となる有害な窒素酸化物(NOx)を垂れ流していること(こそ)が重要な問題であることが図らずも露呈しました。VWの問題は「検査時に不正なソフトでよく見せかけていた」というもの(=完全な不正)ですので、糾弾されています。しかし、問題の本質は、検査場で規定のテストをクリアしても(=合法であっても)、実際の走行時にははるかに高い(それも数倍〜数十倍の)NOxがでていたという事実です(参考サイト)。それが公衆に明らかになりました。実際の走行ではテスト時以上の条件、たとえば丘を超えたり、急加速したりします。それらのすべての行為において、カタログで信じていたものと比べ物にならないNOxがでていたことは、私の想像を遥かに超えているレベルで、改めてショックを感じました。
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