放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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台風予報の伝え方を見直すべきだ(3)川の水位とダム

      2019/10/14

2019年19号台風(Hagibis)は、雨台風だったと言える。各地で観測史上最高の降雨量となり、多数の河川で氾濫が起きた。

東京では多摩川が氾濫したが、心配された荒川の氾濫はなく、ギリギリで広範囲の浸水を食い止められた治水事業の成果は評価されるべきものである。

川の水位や、防災情報も、はじめて多くの人が用い、実際に役立てることが相当できた。

これは大きな成果である。私も事前に「川の水位・防災ページのみかた」について書いておいたので、手応えも感じた。

ところが、サーバーがダウンしたり、表示が遅くなったことで水位情報が満足に表示されなかった。

氾濫に近くなると「欠測」になってしまう事例

多摩川が氾濫した玉川地区では、氾濫がまさに実際に起こりそうになった肝心のときに「欠測」になった。
いろいろな不具合が生じるのが災害だが、これは本当にいただけない。

更に問題なのはダム表示

さらに問題なのはダム表示である。

川の水位をグラフで見守ることは、氾濫しそうかどうかを、個人レベルで判断できる意味で画期的だ。

もう一つ極めて重要なことは、急激に流量が増えないように水を貯めてくれているダムが「あとどのぐらい持ちこたえることができるか」ということだ。上流の様子を知ることが危険回避につながるのである。

最近、ダムの貯水量や、流入量、放出量などを刻々と示してくれるようになった。

これは画期的である。
川の水位・防災情報のみかたで詳しく書いたので、興味のある方はぜひご覧いただければと思う。

こんなふうにグラフで表示してくれるのである。

頼もしいことに、以下の地図には、

「洪水を防ぐために、貯水を増やしていますよ(洪水貯留操作)」とか
「もう耐えられないから、ここから緊急放流してしまいますよ(異常洪水時防災操作)」 の違いも表示されている。

 

本当に必要な緊急時には表示されなくなる運用だった

ところが、である。実際の緊急事態の際には皆に表示しない方針であることが、いくつかのダムの表示からわかった。

まず、PC版の「川の防災ページ(ダム表示がある)」は、ずっとダウンしたままで、表示されなくなった。

それだけなら、アクセス集中によるものだと思う。

しかし、貯水量が満タンに近くなると、なぜかどのダムも、突然貯水量を発表しなくなったのである。

矢木沢ダムの状況

下は矢木沢ダムの例だが、グラフを消してしまい、こんなふうに文字で伝えるだけだ。

放流量の大きさが書かれているが、それがどれだけまずいのかは、さっぱりわからない。

それでも、グラフがあれば、流入量と流出量を見て、どのぐらい深刻なのかが想像できる。

以下の書き方では、文字数を使っても、「放流しました」以外に分かることはない。

「河川に入らないでください」と注意が書かれているが(そうする人は確かに一定数いるのだが)、当たり前すぎて、有効な情報とは言えない。

城山ダムの状況

神奈川のダムでは、三保ダムは随時更新をしているのに、城山ダムだけ更新が止まっていた。
21:30に放流を開始するという報道があったときに、一瞬表示が再開され、その後またすぐに、表示が停止された。

報道では、午後5時に、いったん緊急放流するとされ、緊張が走った。

そこでサイトを探してみてみたわけだが、18:45までの表示しかなく、いくら待っても更新されない。

1時間刻みの18時までのトレンドをエクセルにコピペし、以下のように21時頃満水になることを予測した。
実際にそのとおりになったが、さらに2メートルの運用幅を持っていたようで、+2.0メートルでその後調整されたようである。

+2.0メートルの余裕を持っていることは勿論問題がない。しかし、なぜ、肝心のときに表示を止めてしまうのだろう。

 

二瀬ダムの状況

荒川を守る二瀬ダムも全く同じで、貯水量(青線)が増えた頃から、貯水量(青線)を表示しないように操作され、放水量(黒)のみを表示した。

↑ 貯水位と全流入量のみが「閉局」となっている。一部のみが「閉局」という、とても違和感がある表示である。

川俣ダムの状況

川俣ダムは、「午前1時に緊急操作による放流を始める」と報道された。
その後、貯水量の増え方が大丈夫と判断されて、放流はされなかった。

グラフを見ると、確かに、「貯水量(青線)が午前1時に満水(黄色線)になるペースで増えていた」ことが分かる。

でも、この様子はその時には表示されていなかった(サーバーがダウンしているということになっていた)。

「ただちに命を守る行動をとって下さい」は真意なのか

NHKなどでは「直ちに命を守る行動をとって下さい」と連呼していた。

そう、命が一番大切である。

であるならば、なぜ、貯水量の増加状況を見せないのだろうか。

上で列記したいくつかの事例から、「実際に緊急放流操作をする数時間前からは見せないようにして、1時間前に発表する」という運用をしていることが、外形的には明らかである。

「見せるとパニックになる」という考え方はある。日本らしい考え方である。

少数の頭の良い人で判断し、きちんと指示しようという考えは分かる。

でも、災害のときは、伝達が一番大切である。実際にどうなっているのかを広く知らしめて、グラフが読めるとてもたくさんの人に情報を与え、避難を早く(できるだけ時間的に分散させて)促すことがうんと大切だと思う。

1時間前に「流しますよ」と言われて、そのときに皆が移動したら、どうなるだろうか。

道路がいっぱいになって、皆がそこで溺れ死ぬことになる。よりパニックが起きる。

今回、城山ダムの運用を見ていると、ギリギリのところまで頑張り、洪水を防いだという意味でとても意義深い行動だったと思う。その一方で、現実を知らしめない、日本のありようには大変危機感を覚えた。

良いシステム(川の防災情報)を大金をかけて作っても、緊急時にそれを伝えないという意思が働いては、むしろ意味がないのではないだろうか。

(高原太郎)


 

川の水位・防災情報のみかた

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