放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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台風予報の伝え方を見直すべきだ(2)風速表示

   

いつも皆感じていると思うが、気象庁の「暴風域」の発表はめちゃくちゃ誇大だ。オオカミ少年のような感じで、ぜんぜん実感がない。

どのぐらい実際と違ったのか

画像で検証してみたい。

2019年10月12日 午後7時のNHKニュース。

気象庁発表による暴風機は、直径500キロの、巨大なものであった。

暴風域というのは、10分間の平均風速が25メートル以上あり、危険を感じる風が吹いているはずだ。
中心部の風速は40メートル(10分間平均)と示されている。

本当はどうだったか。

同じ気象庁のアメダス

実際の19時のアメダスを見ると、こんな感じである(表示がせまいので、2つをつなげて合成)。

40メートルを示すところは、ひとつもない。30メートルすら、ない。

25メートルぐらいはあるかも、という領域を描いてみると、以下のオレンジの部分のようになる。

これまでの気象ニュースでは報じられてこなかったが、台風のときに風速が強いのは、沿岸部だ。内陸では半分以下になる。上の絵を見ても、10メートル以下のところが多い。反対に沿岸部は20メートル以上吹いている(吹きそうである)ところが多い。

重ねてみよう。

↑ もう、とてつもなく範囲が違う。これが皆が「おかしい」と感じている原因だ。

これが、誇大広告でなくて、なんであろうか。

安全を担保するためかもしれないが、かえって、「気象庁の言うことはいつも誇大だ」という印象を誘い、結局はだれも信じないということになると思う。

ちなみに、その1時間後には、東京湾口部の沿岸でものすごく強く風が吹いて、羽田では35メートル(10分間平均)を記録した。でも、最大風速40メートルではなかったし、瞬間最大風速は45メートルぐらいだった(冒頭のニュースでは60メートル)。

60メートルと45メートルでは、風圧はちょうど半分ぐらいに減る(風圧は風速の自乗に比例する)。

沿岸部のために注意が必要だったにしても、もうすこし、あの巨大な円はどうにかならないのであろうか。
「沿岸部注意」とかもうすこし聞くもののスキルアップを促す報道はできないのだろうか。

Windy.comの表示

前項で説明した欧州中期予報センター(ECMWF)のデータをもとにしたWindoy.comというサイトがあり、これを見ることで誰にでも予測が簡単に手に入った。

Windy.comの初期画面は普通の風速である。

私がスクショして保存したこの画像は、瞬間最大風速のマップなので、通常の風速(10分間平均)の1.5倍〜2倍の数値になる。
白は40メートルを超える最大瞬間風速で、通常の風速になおすと30メートルぐらいに相当する。

上記のように、風が強いところ(白〜黄色)の範囲が、極めて具体的である。

最大風速、最大瞬間風速も、実際に生じた結果とよく一致している。

そしてなにより、自分は大丈夫なのか、そうでないのか、という不安に応える画像だ。
「東京湾に沿って風が流れ込むから、横浜、川崎、船橋の人は注意ですよ」ということが手にとるように分かる。


 

もう一度、気象庁発表を見て欲しい。

全部がまっ赤の、のべつ幕なしに暴風域ですよ!ということを誇大に示す地図に、どんな意味があるんだろうか。

新潟県とか山形県は風速5メートルなんですよ。もはや強風でもない。

気象庁は、Windy.comと同じ精度の情報を持っている。

もう、いい加減に、前項の点線も、本項の円もやめて、曲線を使って事実に近いものを表示するときだと思う。

そして、気象庁の発表にしても、NHKにしても、実際の予想図を見ながら、リアルタムで解説するようなスタイルにしていくべきだ。そういう情報を間違えずリアルタイムで把握するために、気象予報士の資格があるんだろう。

アメダスなんて、遥かに昔に整備されたのに、それを使わないなんて、ありえないと思います。

(高原太郎)

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台風予報の伝え方を見直すべきだ(1)進路予報の折れ線グラフ http://tarorin.com/05_outdoor/2019/10/typhoon_forecasts1/
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 - 05 課外活動, 56 気象

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