台風予報の伝え方を見直すべきだ(1)進路予報の折れ線グラフ
2019/10/14
2019号台風19号(Hagibis)は、関西〜東北までの広い範囲でかなりの被害をもたらした。
首都圏でも多摩川が反乱するなどしたが、心配された荒川周囲の超広域浸水による首都機能の麻痺は生じなかった。
これまでに行ってきた治水事業がかなりの成果を挙げたと、全体としては総括できる。
しかし台風の報道のあり方には、大きな問題があることがわかった。ここでは、台風報道の(1)進路予想の問題 (2) 風速予想の大きな問題について述べ、次に(3) 川の水位やダムの情報についての問題点を、主にグラフや写真を用いて端的に述べたい。
1)進路予報の折れ線グラフは止めるべきだ。
気象庁は現在、台風進路について、直近は12時間後、その後は1日おきの位置を示し、それを点線で結んでいる。
点線は、東側に偏った誤差を生む
しかしこの方式は、点と点の間が直線で結ばれているため大きな誤差を生じる。
「線が折れる」ところで台風が突然向きを鋭角に変えるのではなく、偏西風に流されて徐々にずれていくのであるから、黄色破線のようにカーブを描く。それなのに、稚拙な折れ線で表現しているのだ。
偏西風で右側に流れるとき、上方・左方に凸のカーブを描くので、2点を短絡する直線を用いることにより、必ず右側(東側)に誤差を加えた経路を示すことになる。日本列島と比べると小さなものに見えるが、実際は60キロも違う。これは、京都ー大阪の直線距離の1.5倍に相当する。
12時間間隔で発表される2つの予想を重ねると、より真実が見やすくなるという、とても特殊な状況を作り出している。
点線は、誤差を小さくしてきた進歩を帳消しにする
ちなみに気象庁は、2018年5月に新型スパコンを導入し予報精度が向上した。
そこで、最近台風の進路予想を、従来の3日後まで→5日後までに延長し、発表することにした。
たゆまぬ努力により、上図で示す位置(2.5日後の予想)の誤差は150キロぐらいに減ってきている。
5日後の誤差は約400キロ(東京―大阪の直線距離)で、これは、欧州の機関と同じ精度で、素晴らしいものである(リンク)。
であるのに、非現実的な折れ線グラフで表示することで、わざわざ東側に60キロもの誤差を自分で加えて発表しているのだ。
60キロというのは、10年ぐらいの進歩を帳消しにするぐらいの大きな値だ。
ただただ、馬鹿らしい。
欧州中期予報センター(ECMWF)の表示
欧州の機関(欧州中期予報センター; ECMWF (European Centre for Medium-Range Weather Forecastst)は、以下のような、当たり前の自然なカーブで、それも確率を示す色付きで、表示している(リンク)。
一日も早く、スパコンから出てくる表示に切り替えるべきだと思う。
(高原太郎)
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