第59回日本核医学学会 教育講演に際して
[2019/10/27]
今週は日本核医学学会総会(松山)でお話しします(2019/11/01金曜日)。MRIの話を、フィールドの違う核医学の総会で、それも教育講演でお招きいただいたのです。もちろん光栄に違いのですが、患者さんの希望に応えられず悩んでいる私にとって、これがどんなにうれしいことか、言葉ではちょっと表わせないぐらいです。
核医学検査の中でとりわけ重要なFDG-PETは、がんのステージング等に欠くことのできない検査です。この決定的な画像診断が世に出たおかげで、悪性腫瘍の分布を正確に把握できるようになり、どれだけ今まで多くの患者さんを救ってきたか、その功績は計り知れません。もしこれが毎月のように使えるなら、何の問題もないのです。
しかし現実には、3割負担でも3万円を支払う必要があります。かなり高額でもあるので、PETで経過観察を頻繁に行うことは許されていません(総額としては10万円ぐらいかかるため)。そのため、2回めのPETを受けることはとてもハードルが高いです。そんな背景もあり、「DWIBSっていいんじゃない?」という風に考えてくださる先生がじわじわと増えてきています。
「MRI」なのに、造影CT(11000円程度)の半額近い、6000円台で受けられる経過観察手段として、患者さんには、ものすごく知識が広まっているのですが、やってくださる施設が圧倒的に少なく、要望に応えることができず、私個人も悩んでいます。自分でクリニックを開き、みんなにしてあげたいと真剣に考えるほどです。試算したところオペレーションには月1000万円ほど必要で、篤志家の出現を待たなくてはなりません。
「共存」というか、「リレー」のようにしてPETとDWIBSを使うと、患者さんにものすごい恩恵があります。DWIBSは2ヶ月に一度撮影することができます。安価だからです。そして適時治療介入がすぐにできます。悪化したらすぐに対策を打てるのです。しかし、なぜか「PET vs DWIBS」という、一回きりの対決の図式で語られることが多いのです。また、「DWIBSは肺の結節が映らないよ」とか、誤解されている先生方もまだまだ相当に多いです。
どれだけの方が聞きに来てくださるのかわかりませんが、2〜3ヶ月毎に患者さんを見守り、経過を見守るための道具として、「初回のPET撮影をしたら、経過観察としてこんな選択肢もあります」ということを、ほんわか伝えてこれたらと思っています。
このために、片平和博先生から、片平先生が毎年自分自身に対して行っているDWIBS検診とか、リンパ節は2回以上撮影すればメタかどうかわかるとか、そういったスライドをいただきました。また焼津市立総合病院の宮崎研一さんから、PETのない病院では経営にプラスとなり、実に700万円の収支改善がなされたという実績スライドもいただきました。
それにしても、お招きをいただき、本当にありがたいです。どうしてなのか、まだ僕自身もわかっていなのですが、企画してくださった先生に、深く深く感謝申し上げます。座長の香川大学の山本由佳先生にお目にかかるのが楽しみです。
なお、道程の途中の岡山で、山陽新聞がインタビューしてくださるそうで、また木曜の晩に今治市医師会講演を担当させていただきます(こちらは乳がん検診)。医師会の講演ですが、会員でなくても、医療関係者の聴講は歓迎とのことです。近くの方、よろしければお越しください。
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