放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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DWIBS法の論文が1000回引用されました(Google Scholar)

   

DWIBS法 最初の論文の引用回数が1000回に

おかげさまで、DWIBS(ドゥイブス)法の、最初の論文の被引用数が、本日(2018年10月13日)、Google Scholar*で1000回を超えました。

これまでに、大変親身になってくださいました、東海大学教授 今井裕先生、神戸大学名誉教授 杉村和朗先生、オランダユトレヒト大学 Peter Luijten先生、またその後の論文作成に尽力してくれたThomas Kwee先生に深く感謝申し上げます。また黎明期のBody DWI研究会立ち上げに尽力してくださった那須克宏先生、黒木嘉典先生に御礼申し上げます。

Google Scholar(グーグル・スカラー):論文に特化したグーグル検索

1001回 引用(Cite)されたことを示しています。

 

目次

▼PETと比較したときの利点 ▼DWIBS法による治療経過観察 ●PETと同じように治療効果判定ができる●安価なので短期間でくりかえし検査できる●高額な抗がん剤の効果を安価に、速やかに判定できる。●早期に治療効果が分かる▼高濃度乳房にも使用できる▼ふるさと納税のメニューにも▼定量化も可能に

▼DWIBS法とは

この論文は、MRIの撮影法のひとつである、「拡散強調画像(DWI)」を用いて、全身の癌を映し出す方法を初めて示したものです。
論文を発表する前は、このような全身撮影は事実上不可能だと思われていましたが、2つの工夫を行うことにより可能になることを示しました。

論文発表時は左のような画質(撮影時間20分)でしたが、2018年には右側(撮影時間10分)のように鮮明になりました。

現在、スクリーニング検査は、他の撮影をあわせて、全体で概ね30分で終わります。

▼PETと比較したときの利点

DWIBS(ドゥイブス)法には、PETと比較して、以下のような利点があります。

ブドウ糖を使用しないので、糖尿病の患者さんでも撮影ができる*ほか、病院滞在時間がうんと短くて済む、窓口支払額が少なくて済む、放射線被曝がない、といったことが特長です。

* DWIBSはブドウ糖代謝とは関係がないので、血糖値が高い方でも検査精度が変わりません。

▼DWIBS法による治療経過観察

●PETと同じように治療効果判定ができる。

PETはブドウ糖の集積がなくなることにより治療効果判定ができます。DWIBS法では、拡散速度をみることにより、同じように治療効果判定ができます。

悪性リンパ腫症例の治療前後(上段:DWIBS,下段:PET)

 

●安価なので短期間でくりかえし検査できる。

PET検査は高額なので、短期間の繰り返し検査は、一部例外を除き、認められません。DWIBS法は「単純MRI(造影剤を使わないMRI)」なので、2〜3ヶ月毎に、繰り返し検査ができます。

さらにその場合のコストも安価です。PET(約3万円)はもちろんのこと、造影CTに比較してすら相当に安価です(以下はその一例です)

 

●高額な抗がん剤の効果を安価に、速やかに判定できる。

最近ノーベル賞を受賞した免疫チェックポイント阻害剤(例:オプジーボ)は年間1000万円ぐらいかかる高額治療です。劇的に効く症例がある一方で、あまり良く効かない例もあります。高額治療薬ですから、治療効果をすぐに把握し、効果のある場合に限って使用すべきですが、DWIBSでは早期に治療効果判定ができます。

オプジーボ投与後の変化(DWIBS法で明瞭に分かる)

 

上記の肺がん例では、CTでは効果があったか不明瞭ですが、同時期に施行したDWIBS法では、効果があったことが明瞭にわかります。

●早期に治療効果が分かる

一般にDWIBS法では、効果があった場合、腫瘍が小さくなるのに先行して信号が低下します。化学療法後2週間で十分判定できることが多く認められます。以下は私の(亡くなった)父の例です。

化学療法のわずか1週間後に、腫瘍の信号が低下していることがわかります。腫瘍のサイズはまだ小さくなっていません。1ヶ月後には腫瘍は縮小しましたが、私は2回めの検査時に「お父さん、抗がん剤効いたよ。よかったね」と言ってあげることができました。

注)化学療法1週間後は、保険診療(税金を使う)ではなく、特別に実験として無料で行なっていただきました。写真の公開は父の遺志によります。

▼高濃度乳房にも使用できる

X線マンモグラフィは、高濃度乳房で、乳癌の診断能が最大で半減することが知られています。しかしDWIBS法では、乳腺の濃度にはほとんど影響を受けずに腫瘍を描出できます。

※ ここに表示した「腫瘍」はPowerPointで記入したシミュレーションです。

このため、画像の質をきちんと調整して撮影する*ことにより、下の写真のように鮮明に乳癌を映し出すことができます。病変の位置を示さなくても、皆さんにも病変が見つけられることでしょう。

*私の専門的知識を用いて、特別なチューニングを行い、画質を良好になるような工夫をして撮影しています。

このような乳がん検診*は、いま、検査着を来たままで(技師さんに乳房をみられることなく)行うことができるようになっています。

無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)として一部の病院で受けることができます。

▼ふるさと納税のメニューにも

まだ高額ですが、全身のDWIBS検診は、焼津市の「ふるさと納税」のメニューにもなりました。「健康のプレゼント」にも使うことができるようになってきています。

▼定量化も可能に

そのほか、昨年には、DWIBS法を用いて、腫瘍の量を定量化(mLで示す)ことができるようになりました。

こういった画像を用いることにより、以下のように、化学療法の効果を、数値や色で、ひと目で判定できるようになってきています。

 

DWIBS法は、このように、科学的医学的に、また社会的に徐々に浸透をしてきています。

また、最近は人工知能による画質および診断能の改善が進んできました。

年2回開催しているBody DWI研究会では、副代表世話人の片平和博先生、中西克之先生、また高橋光幸技師、そのほか多くの皆様の、情熱とご協力をいただいてさらに改善を進めております。また平素より、MRI製造会社の皆様には、熱心な議論や励まし、共感をいただいていおります。

この機会を借りまして、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

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