放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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小保方氏と瀬戸内寂聴氏の対談は、大切なことを忘れていないだろうか

      2017/04/24

小保方氏と瀬戸内寂聴氏の対談が行われ、婦人公論にその内容が掲載されました。
これに対し、「STAP細胞:小保方晴子氏を取り上げるメディア 研究不正は語られたのか」 (*1) というタイトルで、研究不正について全く触れない態度はよいのだろうかという提起が行われています。私はこの内容に同感し、FBにダイジェストとして紹介したのですが、その後にいただいたコメントに感動したので紹介します。


▼STAP細胞

なんて書いたらいいんだろう。僕はこれを読んで、すごくほっとした気持ちになりました。
・・・・・
個人への過剰なバッシングは問題がありますが、不正があった研究や論文とは別の問題なのです。

いまでも、インターネット上では「海外でSTAP細胞研究が成功した」「小保方さんは実は間違ってなかった」といった議論が起こる。

粥川さんはそれをネット上に広がる「流言」と呼ぶ。
「STAP細胞が科学的に再現されたと主張するためには、小保方さんたちと同じ研究対象、方法、結果が求められます。そのうち、どれかが違ったら、それは別の研究です」

・2015年9月に、理研の調査で実務を担当した研究者たちがSTAP細胞とされたものはES細胞に由来するものであることを明らかにした
・7つの研究者グループが小保方論文の追試に失敗した(再現できなかった)

上記はそれぞれ論文の形式にまとめられて『ネイチャー』の「BRIEF COMMUNICATIONS ARISING」という投稿欄に掲載された(Nature 525(7570): E4-5, 2015; Nature 525(7570): E6-9, 2015)

「(小保方さんが)科学者として科学的な主張をしたいのであれば、このBRIEF COMMUNICATIONS ARISINGに反論を投稿すべきだ。「STAP細胞をめぐる「流言」を検討する」(ウェブサイト『シノドス』)」

「今後、小保方さんたちのアイディアと関連するような、研究が成功する可能性は十分にあるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、大事なのは、同じ対象、方法、結果。それが伴わない限り、仮にSTAP細胞と同じような研究結果が出てきても、小保方さんの研究、論文に不正があったことは覆りません」
・・・・・・

これに対し、「この話が科学的技術的観点での考え方の全てだと思うので、納得理解できるひとはどのくらいいるのでしょうか?」という質問をいただきました。たしかに、その点はとても重要だと思います。以下のように答えました。


スクリーンショット 2016-05-25 17.49.34

スクリーンショット 2016-05-25 17.48.20

上記で紹介した研究不正の検証結果 (*2)


その後、荒木先生が私の投稿をシェアしてくだったのですが、その際に、とても的確なコメントをされていました。
スクリーンショット 2016-05-25 17.57.04

・・・・
私もこの記事が、これまで見た中で一番しっくりときました。

高原先生のご意見にも全面的に賛成です。

小保方氏については何回か書きましたが、根拠のない流言飛語が一向にネット上から消えません。

確かに、彼女への過剰なバッシングの部分のみに限定すれば彼女は被害者でしょう。

しかし、その部分だけを拡大して一冊の本にして反論するのは筋違いです。

当時の彼女がいかにひどい仕打ちを受けたかということと、彼女の犯した不正への罪の重さはまったく別の問題であるからです。

彼女の論文はすでに不正が証明されており、また彼女の使用した細胞がES細胞であったこと、別の7つの研究グループが彼女と同じ手法で追試をしてすべて失敗したことは二本の論文にまとめられて、正式にNatureにアクセプトされています。

論文の不正が証明されたということは、スポーツ選手では八百長が証明されたことと同じであり、八百長を犯した選手はどんなに優秀な選手であっても永久追放されます。

また、仮にSTAP現象と似たような趣旨の初期化現象を起こすことに別のグループが成功したとしてもMateral&Methodが異なればそれは全く別の研究であり、彼女の業績にも名誉回復にもまったく寄与しません。

彼女が名誉を回復したければ、研究に不正が無かったことを証明し、以前と同じMethodでSTAP現象に成功し、それを論文にまとめて投稿しアクセプトされる必要があります。その上で上記の論文への反証もする必要があります。それが筋です。

それなのに、論文には一切反論せず、筋違いの本を出した上に、瀬戸内寂聴氏のような素人と対談して”男性研究者のバッシングは激しかった”などと今度は議論をジェンダー論にすり替えています。

男性研究者の怒りは、当然であり、また怒っていたのは別に男性だけではなく女性もたくさんに人が怒っていました。

議論のすり替えや、加害者と被害者の入れ替えは政治家や官僚、弁護士、評論家だけでたくさんです。

そして、このような本質を突いた記事がアクセスランキングで20位にも入らず、小保方氏の容姿といったどうでもいいことが2位に入っていることが情けないです。

ネットのみで情報収集することがいかに危険か、判断を誤るかということを痛感しました。


【参考リンク】

*1 STAP細胞:小保方晴子氏を取り上げるメディア 研究不正は語られたのか http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160524-00010002-bfj-soci
*2 研究不正の検証結果 http://www.webcitation.org/6OatLVjej

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