第100回 ドイツ・レントゲン学会 参加記(学会編)
2023/09/07
大変ありがたいことに、第100回 ドイツ・レントゲン学会 での講演にお招きをいただきました。
レントゲン博士はドイツでX線(レントゲン)を発見し、第1回のノーベル賞を受賞者となりました。その博士の名を冠した、ドイツの誇る学会ということになります。
それが100回目の記念大会を迎えたということで、大きなレントゲン博士の写真が そこかしこに飾ってあり、お祝いムード満点でした。
レントゲン学会らしい、面白いアトラクションもありました。これは、昔の装置でレントゲン写真を撮ってもらう風な体験です笑
実はこのレントゲン写真は(多分)かなり有名なもので、右胸心(うきょうしん)と言って、心臓が本来の左側ではなくて逆の右側に存在する患者さんのものです。初期のレントゲン透視の様子を写した写真を、どこかの教科書で見た覚えがあります。
↓これはオープニングセッションです。
真ん中に、レントゲン関係の装置で描かれた「100」の文字があり、両側にレントゲン博士の写真が対象的に置かれています。圧巻のセレモニーでした(ドイツ語だったので内容はわかりませんでしたが・・)
私は、インターナショナルセッションの「Breast Imaging」でお話をさせていただきました。この講演では、今行っている、「無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)」がどのような成績を出したかをお話してきました。
MRIを用いた乳がん検診は、座長のKuhl(クール)教授が、造影剤を用いて短い時間で行う方法*を考案されました。X線マンモグラフィに比べて圧倒的に検出率が良いため、とくにハイリスクの方に対する検診として、急速に標準的なものとなってきています。私の前の2演者はこのことについてお話をされました。
*短縮MRI; Abbreviated MRI (AB-MRI)
一方、私の発表では、造影剤を用いない方法でも好成績がでたことをお示ししました。
座長をしてくださったクール先生です。
検診の受診者数はすでに1000名を超えていますので、その大きな数の検討において、がん発見率が1.5%程度(マンモグラフィの実に5倍程度)に達していたことは、かなりの驚きを持って皆さんに聞いていただけたようです。
その事実も大切なのですが、私の論点は、それ以外に、画質の調整が非常に重要であること、またMRIメーカーによって画質が異なること、さらに同じメーカーの同じ装置でも、違う病院で行うと大きな差があること、にあります。このことは非常にみなさん関心をもっていただいたようで、終わったあとに積極的な質問を受けるなど、かなりの反響がありました。
やはり皆、拡散強調画像の画質のムラにはかなり悩んでいるようです。私は、メーカーの別なく、すべての装置で改善をしたいと思っていますので、皆に認知してもらえて、とても良かったと思いました。
今回は、11病院でできたことを示しましたから、調整し常に監視していれば多数の病院で品質を保つことも示せたのですが、すべての装置で実施できるための解決はこれからです。しかし将来的にはとても重要なことですので、ぜひ皆さんのために頑張りたいと思います。
夜には盛大な会長招宴にお招きをいただきました。
↓ これは、同じく招聘講演を行った山梨大学の本杉宇太郎先生(左)と、肝臓の招待演者の皆さん。
そのほか、会長招宴でKuhl先生とゆっくりお話できたことはとても幸せでした。
私はKuhl先生が「honest(正直)」という言葉を良く使われるので心から尊敬していて、私もまた画像に正直でありたいと常に思っているからです。「今度またドイツのアーヘン(Aachen)でお話しましょう」ということになりました。実現するといいなぁ。
また、欧州乳がん画像学会(EUSOBI)のメンバーとも多くの話ができました。ぜひ参加してください、と言ってもらえたので、大変光栄に思いました。拡散強調画像の画質向上、ぜひ協力したいと思います。
今回の講演は、日本医学放射線学会が推薦してくださることで実現しました。とても貴重な機会をいただき、本当にありがたく思っております。
また、今回の発表にあたっては、11の病院のスタッフのみなさんが協力してくださり、どのような結果が得られたのかが分かってきました。皆さんのご厚意に改めて御礼申し上げます。
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