放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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スーパー(スモール!)ムーン

      2017/04/24

みなさんは、最近インターネットで「スーパームーン」という満月のことを聞いたのではないでしょうか。すごく大きな満月の日のことですよね。

どうしても大きいのばかりニュースになりますけど、2016年4月22日の今日は逆にすごく小さい満月なんです。せっかくだから、スーパースモールムーン!も観てみませんか?


 

月は楕円軌道を描いて地球のまわりを回っているので、近づいたり遠ざかったりしています。

最も近づくと、36万キロ以下
最も遠ざかると40万キロ以上

になるのです。4万キロ以上違いがあるので、10%以上の差ですね!

正確には

(最遠406,000-最近356,000)/最近356,000=0.1404… ですから

14%も距離が異なります。視直径(見かけの大きさ)も14%異なるんですよ。

スクリーンショット 2016-04-22 8.22.54

ひゃあ〜こんなに違うんですよね。直径が14%違うんですから、面積はその2乗で効いてきますね。そうすると・・

1.1404 x 1.1404= 1.3005…

なので面積は30%も異なります。つまり明るさが30%も異なるんですね。今年の満月の大きさの変化はこんな感じです。今日の満月は可愛い満月です!

スクリーンショット 2016-04-22 8.23.14

 

以下は天文ヲタクの人と、「インターネットにおける印象操作」に興味のある人が読んでくださいね。


 

僕は中学と高校のときに天文部で、どうしてかやたらと星が好きになったので、ずーっと星空とともに育ってきました。東京の空がほとんどだけれど、毎晩毎晩、場合によってはなぜか曇り空の時も、夜空を飽きもせず見上げていました。見ようと思えば世田谷だって4等星が見えたんですよ。もちろん観望会をするために山にも登り、美しい星空もみました。

そうしたら、まず目が良くなって驚きました。小5のときに仮性近視になり、0.8ぐらいになりましたが、中学からは視力がぐんぐん良くなって、毎年測る度に、1.0→1.2→1.5→となってとうとう視力2.0になったんです。最近では残念ながら乱視が少し出たので、裸眼で1.0〜1.2ぐらいになってしまいましたけれどね。

あと、「星の位置と明るさ」にめっぽう強くなって、曇り空でも、少しの晴れ間さえあれば、「今日のこの時間のこのあたりなら、あれは〜だな」と、星座や2等星がわかるようになりました。月や惑星がどんなふうに位置を変えていくか、なんていうのも、毎日みていると自然にわかるようになります。今でこそ頻度は落ちましたがその習慣が残っているので、月や惑星がどこにあるかはだいたい分かりながら生きています。これすごくいい感じなんです。

そういった、昔からの、星とともに生活をしている人からみると、最近のインターネットでのニュースの作り方において、2つ違和感を憶えていることがあります。

ひとつはこの「スーパームーン」。月の軌道が楕円であって、かなり視直径が異なることはいつも起こっていることで、スーパームーンは、厳密に言えば少しずつ大きさ(程度)が違うけど、実に頻繁に起こっているんです。このグラフの下のピークがそれで、単なる毎年の現象です。スーパームーン、おおそうかい。まぁ一度は観ておくかね〜。

スクリーンショット 2016-04-22 8.51.00

少し拡大した図が下のようで、赤線がスーパームーンのときの地心距離の変動を示したものなのですが、大きなスーパームーンと小さなスーパームーンの間には、1万キロぐらいの差があるだけなのが分かりますね。率にして3%の小さな違いです。

スクリーンショット 2016-04-22 8.51.37

さらに!「大きなスーパームーン」(赤線の下のピーク)だけをみてみると、ピーク群の値の差はさらに1/10の、たった0.3%ぐらい。この間の「何十年ぶり」というのは、この、ものすごい僅かな率の差には触れず、「何十年ぶり」という時間要素だけを強調して述べたんですよね。

正確に言うと・・・

「何十年ぶりに、平均的な最大スーパームーンより、0.15%も大きなスーパームーン!」

みたいなものだったんです。「平均スーパームーン」から見ると、少しは大きいですけど、以下のように1.5%だけなんです。

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これでみても実は見応えには全く差がないけどね。なんじゃそら。


 

当たり前の現象を、だれかが、それらしくインターネットに流すと話題になるのって不思議なものです。印象操作って怖い。

そのほか、流星群のニュースがあるでしょう。あれはロマンチックなことだからニュースになりやすいんだなって思うんですけど、僕らの住んでいる北半球において素人的にたくさん流れるのがわかるのは、

  • 1月のしぶんぎ座(りゅう座)群
  • 8月のペルセウス群
  • 12月のふたご群

の3つだけなんです。これらはまあまあ空の暗いところに行けば、未明なら1時間に30個近くは観察できます(つまり5分見上げていれば1〜3個は観れる)。そのほかの流星群は出現数がまさに「桁違い」に少なく、10分ぐらい見ている程度だと全くわからないんです。

おうし座群なんて、1時間に条件の良い空で2個ですよ2個。どうやってそれが流星「群」だって気づいたのかって、そっちをほめてあげたくなる感じすらします。

スクリーンショット 2016-04-22 10.30.06

なのに、連休中は流れ星が流れる!とかニュースが伝えられます。そのニュースを流した人は、きっと観たことないんだよな〜、記事を書いてお仕事終わりで、自分はお布団で寝ているんだろうなぁ〜なんて思っていますよ(^^;)

・・・というわけでちょっとシニカルになったかもしれないけれど、僕からは、「本当にめずらしい」「ちょっとめずらしい」「見るのが難しい」「だれでも見れる」という情報をつけて、納得できる天文現象についてこれからも書こうと思いますので、星好きの人は楽しみにしてくださるとうれしいです。


 

【参考サイト】

▼今日の満月について

http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2016/04-topics03.html

▼どうして楕円軌道になるのか、どの程度異なるのか

http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B7EEA4CEB8F8C5BEB1BFC6B0.html

http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B7EEA4CECBFEA4C1B7E7A4B12FC2E7A4ADA4CACBFEB7EEA1A2BEAEA4B5A4CACBFEB7EE.html

▼年間の流星群

http://www.nao.ac.jp/astro/meteor-stream/major.html

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