ドイツ・アーヘン訪問(2) 〜 プレゼンとKuhl教授
2023/09/07
朝カンでプレゼン
さて、いよいよ運命の(?)朝がやってきました。時差ボケもあるので、夜はあまり捗らず、朝4時から準備に勤しみましてプレゼンは完成!予定通り7時半にSimone Schrading 先生にピックアップしてもらいました。
後ろに見える緑色のもののが、前回お話したドクターヘリの発着場です。
Kuhl教授同席できず!
で、まず秘書さんのオフィスでちょっとコーヒーを頂いていたのですが、Simone先生が再度やってきて、「ホントにごめんなさい!Kuhl先生に急用がでさきてどうしても参加できなくなってしまったのです」とのこと。どうやらご自身が病院にかからなくてはならない事情が生じたらしいのです。このため夕食の予定も、この時点で白紙に近い状態になりました。
こういうときに、「ついていない」と思う人もいると思うのですが、自分はあまり気にしません。異常なほどの楽天家なのかもしれませんが、同じ地球の上にいるのだから必要ならもう一回来ればいいし、Simone先生にはもう十分評価してもらったし、ひょっとしたら、この予定外のことが、別の何か良いことを引き起こすかもしれないからです。
まぁ人生いろいろあるわけですが、「ついていない」ことは思想上発生しないので、自分はどっちかというと、とてもついている人なんです笑
元気にプレゼン
というわけで、超元気にプレゼンをしました。僕はNative Speakerではないので、おもしろ写真をだして笑ってもらって掴みをとることにしているのですが、今回は昨日の温泉の話にしました。
で、、、これが話しているときの様子です。講演中は全く知らなかったのですが、後述する塚田先生がアーヘン大学に留学中で、彼が撮影してくれていたのです。雰囲気のある写真、とてもうれしいなぁ。
こちらは、Danielくんが撮影してくれたもので、プレゼンが終わってSimone先生からの質問を受けているところ。写真だとそれなりにうまくやっているように見えます〜。
講演が成功したかどうかは、質問を受けるかどうかによりある程度量ることができますが、今回も数件の質問を受けたので善しとしたいと思います。
講演後に、慶応義塾大学・放射線科の塚田実郎先生(IVR)と、奥さんで女子医大・乳腺外科の塚田弘子先生が挨拶に来てくださいました。日本人がいるとは思わなかったのでびっくり!
乳がん患者さんの撮影 放射線科医も交互に
さてプレゼンが終わった後で、Simone先生、Daniel先生、および塚田弘子先生などとMRI室に行って、次々に患者さんを撮影していきました。写真奥は、MRI担当技師のCarolさん。
とても驚いたのですが、どの放射線科医もMRIの操作ができて、知識の程度の差はあるけれど、いずれも撮影パラメータについて僕と一緒に議論できるんです。技師さんと入れ代わり立ち代わりスキャンします。これはDaniel先生と一緒に並んでいるところ。
日本では一部を除きほぼ絶滅してしまったのではないかと思われる、このような(放射線科医同席の、診断しながらの)MRI撮影は、大変すばらしいものでした。
医師と技師が共に居ながら議論しながら撮影しないと、患者さんごとにあわせた撮影ができないし、試行錯誤で得られる大切な気づきが乏しくなるので、進歩もあまりないのです。僕はこれを能動的診断と呼んでいます。実は日本では、かなり前から、ほぼ完全に決まった画一的な総合メニューを実行し、それが診断装置(PACS)に送られて、放射線科医はその画像を見て診断する(受動的診断)がほとんどです。これが大量に臨床にも流れて、「MRIはたくさん画像があってワカラン」という状況を助長しています。
MRIを利用した生検(バイオプシー)
この日はたまたま、MRIを用いた生検が入っていたので、見学をさせてもらいました(MRIガイド下 吸引 針(はり)生検)。Simone先生と技師さんたちの手際と動きがも〜のすごく良いので、さすがドイツ!と感心しました。
あとで聞いてみてびっくりしたのですが、MRIガイド下吸針引生検の経験は、アーヘン大学のみですでに1700例を超えており、以前とあわせて3000例以上を施行しているんですって。意味間違ってとったかなと思って、聞き返したぐらいです。Kuhl先生のところは、桁が違いました(汗)
読影室に戻って、症例検討
夕方になり患者さんの撮影が終わったので、読影室にもどって本日の症例チェックをしました。実はSTIRベース(DWIBS法)でも、とても大きな乳房に対して脂肪抑制が一部不良になった症例もあったので、完璧を期すにはどうしたらよいかなど話し合いました。
そしていよいよ夕方です。「Kuhl先生、大丈夫になったかどうか聞いてくる」とSimone先生が部屋を出ていきました。
ほどなくして帰ってくると、開口一番、 “We have good news!”
ということで、Kuhl先生が夕食に来れることに\(^o^)/
そうですワタシはいつもついているんです笑 ←調子が良い傾向あり。
Kuhl先生と夕食 実は最初にプレゼン
そして、すこし夕食が遅めに設定(19:30〜)になったので、ホテルで30分ほど仮眠することもできました。脳脊髄液が老廃物を流しだしてくれたので(よく眠ることが大切なもう一つの理由)、再びハイパーに。 で、もうそれからが120%全開でした。
Kuhl先生は、思った通り、良い意味でなにも気にしない人でした。料理や飲物に関する議論と僕のプレゼンが混ざるのは完璧にOK。
僕も、スイッチオンで(Kuhl先生がこちらに向いたら)話し始め、スイッチオフで(Kuhl先生が飲み物をDanielくんと話しはじめたら)プレゼン止めます。餅つきみたいな感じで超楽しかったです。
こうして、用意した内容を完璧に伝えることができた上に、Side by Sideでお伝えしたので、スライドごとに「これはこう、あれはこう」と教えてもらうことができました。
Kuhl先生は、Bonnで生まれてBonnで育ち、Bonnで学位をとって、Bonnで教授になったそうです。そしてBonnの郊外にサラブレッドやポニーを飼っていて、週末に時間ができたときは、そこでくつろぐとのこと。お馬さんを見せてくれました。
ヨーロッパと言うと(僕もそうでしたが)夏は3週間の連続休暇があり、自分が選んだところでまず一週間連続で滞在し、次の一週間はまた別の所に移動をして過ごす、というのが典型的なパターンです。しかしKuhl先生は、夏休みはずっとここで過ごすのだそうです。旦那さんはComputer Scientistで凄腕とのこと。またお父さんはとても良い人で感謝しているとのことでした。すべての話が私には新鮮でした。
そうこうする間に夜も更けまして、ISMRMでまた会議をすることや、今後の研究のこと、また、日本にお招きしたら来てくださるとのありがたいお話をいただいて、レストランをあとにしました。短い、しかし濃密な時間をいただきました。
さいごに 〜「要素技術」や「診断知識」を活かす勤務形態
私は、いままでに多くの講演をしてきました。Cine MRI(小腸閉塞、癒着診断)や、Phase Contrast MRA、あるいはlow b value DWI / iMSDEなどの要素技術はまだまだ多くの臨床応用に繋げられると感じます。
これらのスライドについて彼らに見せたところ、目を輝かせて、すぐやってみたいと言ってくれました。放射線科医は平素、診断しながら「ホントはこういうことがわかればいいのになぁ」といつも思っているからです。
放射線科医がこれらの技術(の存在)を知って、MRIのそばに座り、豊富な知識を持つMRI担当技師と一緒に臨床を進めれば、みなに役立つことと思います。2D-TOFやMRCPなどの一見古い技術も、毎日の臨床の、いろんなところに活かせます。
そういう意味で、このAachen大学の様態は理想的で、ぜひまた来て伝えたいなと思いました。日本でもこのような環境があったらと思いました。
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