放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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アップルのメディカルリサーチキット Medial ResearchKitの持つ意味

      2017/04/24

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2015年3月10日、Appleのイベントでは、Apple Watchや新しいMacBookが登場しましたが、医療関係者(および患者)にとって非常に重要なコンセプトが発表になりました。これは医療における「リサーチ」に画期的な成果をもたらすものです。感動したので、スクリーンショットを撮りました。解説をしたいと思います。

↓いままでの医療研究における、きわめて大きな限界は、「研究への参加者数が少なすぎること」でした。

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↓研究に参加者を募るためには、ひとりあたりそれなりの謝礼を払わなくてはなりませんし、募集自体も大変です。ですから、大量のデータを集めるには莫大な予算も必要です。

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↓もうひとつの限界は、「主観的なデータの取得」に頼っていることです。病気の症状を調べるために、患者には「どの程度症状が重いのか」を主観的に書いてもらいますが、

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↓たとえばこんなふうに(0〜4のうちの)「2番めかな?」、といったように主観的に記してもらいますから正確性には劣ります。

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↓3番目の問題点は、データの取得頻度を高くはできないということです。
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↓患者さんに協力してもらうわけなので、たまにしかデータを得ることができません。スクリーンショット 2015-03-10 11.40.14

↓さらには、(協力した患者さんにとってつまらないことに)情報の提供が一方通行でしかないことも問題でした。結果がどうなったかを知りたくても、容易に知ることはできませんでした。
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↓いま、iPhoneは世界で7億人に使ってもらっています。
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↓ですから、iPhoneや、これから発売するApple Watchを用いて、こういった医療研究に貢献するためのキットを作りました。
それがReaserchKitです。
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↓研究者にとってもアプリを作ることが容易です。

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↓すでに沢山の大学の協力を得て、現時点で5つのアプリを作ることができました。
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↓ひとつめはパーキンソン病です。

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↓患者さんが研究に参加するのはとても簡単です。このように、同意書の説明を読んで
(同意=Consent)

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↓サインをすれば良いのです。

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↓ iPhoneのアプリケーションを使って、パーキンソン病の診断もできます。
これはタッピングテストというもので、2つのボタンを交互にタップします。

スクリーンショット 2015-03-10 12.12.14↓どのていど敏捷にタップでき方どうかをもとに、振戦(Tremor; トレモール; ふるえること=パーキンソン病の症状のひとつ)を診断できます。
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↓また、iPhoneに向かって「アー」と声をだすことで、声帯の震えが正常かどうかを診断できます。

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↓さらに、iPhoneをポケットに入れて、20歩進み、また戻ることで、身体の搖動を調べることができます。
(注:パーキンソン病では身体のバランスが悪くなる)スクリーンショット 2015-03-10 11.42.39↓ 振戦(Tremor; ふるえること)と活動性には(ここに示すような)負の相関があるので、
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↓自らの状態がどうであるかを視覚的に見ることができます。

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↓そのほか毎日の血糖値をモニタしたり、毎日の運動量や血圧の様子を把握し、心筋梗塞のリスクを計算したりするのに使えます。スクリーンショット 2015-03-10 11.43.44 スクリーンショット 2015-03-10 11.43.53

喘息の発作などをレポートしてもらうことにより、(大気汚染と喘息のトリガーの関係などについて)研究ができます。

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↓これはAppleのホームページから。PM2.5などの濃度が表示されている。こういった大気汚染指標と、喘息発作を起こしている人の関係がリアルタイムに把握できるようになる可能性があります。

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乳がんの患者さん向けには、(あまりよく知られてはいない)治療後たどる病状などについての情報を共有してもらえます。

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↓こういったリサーチにもっとも重要なことは、プライバシーだと考えています。スクリーンショット 2015-03-10 11.45.22

↓参加者は、参加するかどうかを自らの意志で自由に決めることができます。

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↓参加者は、どのようにデータが使われるのか(許可範囲)を決めることができます。
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↓Apple社は参加者のデータを見ることはありません(拍手)スクリーンショット 2015-03-10 11.45.58↓そして、これを広く普及させるために、このフレームワークをオープンソースにしたのです。
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↓会場拍手の嵐
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↓本日の時点で、この5つのアプリはiPhoneで使用してもらえます。

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Medical Researchに革命をもたらす

紹介されたアプリケーションの有用性もさることながら、最初に説明された、「データの取得するが少ないことが限界のひとつ」ということに、はっとしました。たしかにそうだったのです。

「データの数を(飛躍的に)増やすことが出来る」「データ取得頻度を上げることが出来る」「(測定装置と一緒にあれば)正確なデータがとれる」といった利点があれば、いままで分からなかったことが簡単に解明されることにつながります。

その端末としてiPhoneなりApple Watchが活躍する(内蔵されている加速度計・GPSやマイクなどを用いる)というコンセプトを感じると、「Apple Watch」のみかたも変わってくると思います。

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