テスラ・モデルSの自動運転中に起きた死亡事故ーテスラからの発表を邦訳してみた
2018/01/03
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▼テスラ・モデルSの自動運転中に、日本におけるいわゆる右直事故(テスラが直進、トレーラーが右折)(米国では鏡像になる)が発生し、ドライバーが亡くなるというショッキングなニュースが入ってきました。
これはいわゆる「右直事故」ですから、一般的には右折(米国では左折)側、つまりトレーラー側に8割の過失があり、直進車(テスラ)には2割の過失がある事故ということになります。道路を横断する車両は、直進車両の走行を妨げてはなりませんから、言い換えると、トレーラー運転手という「人間」が、自らの不注意により、8割の過失がある死亡事故を引き起こしたということです。なぜトレーラー運転手は、見通しがよい道路で、直進車があるのに、道路を横断したのでしょうか。認識できなかったのか、考え事していて安全確認を怠ったのか、渡れる「だろう」運転で無理に進んでしまったのか・・。さまざまな原因が考えられます。
しかしこの事故が自動運転モードがONになった状態で発生したことで、その安全性について注目されるところとなっています。この運転者は、以前のYouTubeへの投稿で、他車が割込んで来た危険状態を、自動運転により回避できたことをレポートしています。しかしその時に運転者がDVDを見ていたという指摘があり、また今回もそのような疑いがあるそうで、これが本当なら明らかな(ここでも人間の)重大な過失があることになります。そして、そのような状況であったとも作動して欲しかった自動運転(の緊急ブレーキやアラート)がどうして作動しなかったのか、という点にも皆さんは不安を覚えることしょう。30日後に正式なレポートがでるようです。
事故の状況はYouTubeなどで米国のニュース転載がなされ始めましたし、米国の調査機関では、予備調査が始まったばかりですので、その推移を見守りたいと思います。また亡くなったドライバーは、なによりテスラのコンセプトについて理解をしている、いわゆるアーリーアダプターであり、その死には、私もユーザーのひとりとして、心より哀悼の意を表したいと思います。
皆さんも関心があることと思いますので、テスラからのコメント(英文)を邦訳してみました。短い時間で行ったので、間違いがあるかもしれませんがご容赦ください。このコメントについてはなるべく早くに多くの方が読めるようにしたほうが良いと思うからです(順次改善したいと思います)。
▼なお、ひとつだけ注意喚起したいことは、日本では「一つでも事故が起きると全部ダメ。危ない、やってはいけない」という論調がどうしても目立つ国だということです。しかし世界的には自動運転に急速に向かっており、合理的な範囲で安全を確保しながら進んでいく必要があり、全体的な安全性(割合)について、巨視的な観点からの、冷静な考察も必要だということです。これは医学においても、ひとりひとりの命の大切さを尊重しながら限られた経験で新薬の治験を行って、しかし実際に新薬が発売されたあとには、予期せぬ重大な(時に亡くなるような)副作用の発生にしばしば見舞われ、これをフィードバックしてさらに安全性を高めるというプロセスを踏むことでもわかると思います。
現在の単眼カメラとレーダーの運用において足りない点については、今後解析がなされ、進んでいくことと思います。テスラにはメルセデスが資本参加しており、きわめて似た(しかしメルセデスではよりスムースであると評論家が述べている)システムは、Eクラスに搭載され今秋にも発売予定と聞いています。これらの車種においても、詳細で慎重な解析結果を待っていると思いますが、実際の(大量の)走行データは安全性を高めるために極めて重要で、これがどうしても欠かせません。「危険」→「ダメ」と声高に述べることに終始すると、日本メーカーの萎縮を招き、結局は日本の競争力を選択的に削ぐことになります。これこそが一番忌避しなければならないことだと考えます。
昨夜、我々は米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が最近、モデルSの自動運転機能作動中に発生した死亡事故について予備的調査に乗り出したということを知りました。今回の死亡事故は自動運転機能が始動してから1.3億マイルほど(の走行距離)ではじめてのケースです。米国内の全車両においては、9400万マイルごとに死亡事故が発生しています。世界では、約6000万マイルごとに発生しています。ここで強調したい重要なことは、NHTSAの措置は、単にシステムが事前の予測(設定)に従って働いていたかどうかを判断するための予備的な調査であることです。
テスラ社の基本的手順に基づき、当社は事故が起きるとすぐに、事態をNHTSAに報告しました。我々が把握していることは、大型トレーラーがモデルS車に対して交差点を垂直方向(左折段階)に走行しているとき、モデルS車は自動運転が作動している状態であり、公道の分岐点(交差点)を直進していたということです(注:日本における右直事故に相当、テスラ側が直進、相手トレーラーが(日本なら)右折)。天候が快晴だった中、自動運転機能も、そして(テスラの)運転手も、大型トレーラーの白い側面(車体)を認知しなかったため、ブレーキ(機能)が作動しませんでした。大型トレーラーの位置する場所と車高の高さに加え、極めて稀な状況(注:逆光や車体色と空の色が似ていた状況を指すものと思われる)が、大型トレーラーの下をくぐり抜けるという事態を招き、ウインドシールド(注:車体の主要部分でなく、窓のある高さ部分)が衝突する結果となりました。モデルSが衝突した部分が、トレーラーのフロント部分、もしくはリア部分であったとしたら、たとえ高いスピードであったとしても、(注:今までに起こった)他の多くの場合のように、高度な衝突防止システムが作動し、深刻な人的損傷を招くことはなかった可能性が高いと思われます。
重要な注意点は、テスラは自動運転機能をディフォルト(初期設定)ではOFFにしていること、まだ運転者がこれをONにする際には、このシステムが新しいものでパブリックベータ版であることをきちんと認識する必要があるということです。自動運転機能を起動すると、以下の様なアラートが表示されます − 自動運転は「運転補助設定であり、運転手は常にハンドルを握っていなければいけません」、また「運転手が車のコントロールを維持する必要があり、なおかつその責任があります」。くわえて、自動運転モードに入る際には、車は運転手に対し「常に注意を払っていてください。いつでも自らが運転できるように準備していてください。」と毎回通知しています。また、車は頻繁に、運転手の手がハンドルにかかっているかどうかをチェックしていますし、ハンドルを握っていないことが検出されれば、運転手が視覚、聴覚で認知できる警告を発しています。そして、再度ハンドルに手がかかったと認知するまで車体は自動的にゆっくりと減速を始めます。
作動中は可能な限りの安全を目指しているため、我々はこうした手段を取っています。(注:仮想的なシミュレーションでなく)実際の世界において走行距離が蓄積され、(注:シミュレーションでは不可能なほど)稀な出来事にシステムが順応されていけば、事故の可能性は減り続けるでしょう。自動運転機能は常に改善され続けていますが、完璧なものであるわけではなく、いまだに運転手に対して、(必要なときに)警告を発さなければなりません。しかしながら、運転手が(走行中にあらゆることを)見落とすケースが続発しているという事実に即して考えると、自動運転機能はマニュアル運転中のデータと比べた場合、運転手の仕事量を減らし、統計上有意な改善をしていることは疑いがありません。
私たちは事故に遭われた素敵な家族をもつ被害者の方の死に深く悲しんでいます。彼はテスラ社と電気自動車コミュニティの友人で、生涯を発明と技術に捧げた人でした。そしてなにより、テスラ社のミッションを強く信じてくださってもいました。事故で彼を失った家族、友人の方々に哀悼の意を表します。
▼なお、米国でのディスカッションにおいては、米国のトレーラーは、英国のトレラーと比較して、側面下方にガードがなく、これが原因で対象物として認識しにくくなっているはずであるという推論がアップされており、注目されます。この程度のアナログ的な改善は、(高度なシステムに比べて)きわめて安価で直ちに行えるからです。
テスラのレーダーが設置されている高さと、トレーラーの本体下面高さ
▼こうした中、AutoPilot のソフトウエアは 現行のver.7.1から、近く8.0にアップデートされることが報道されています。
http://electrek.co/tag/autopilot-8-0/
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