放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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MR-Neurography

   

今日公開された “Radiology”誌の “Images in Radiology”に、以下のような高分解能3D表示の、神経原性腫瘍の画像がでています。画像をコピペできないので、リンクを張ります。とてもきれいですね。

High-Resolution Three-dimensional and Cinematic Rendering MR Neurography

https://pubs.rsna.org/doi/abs/10.1148/radiol.2018180243

 

Radiology 2008

MR-Neurographyは、以前、拡散強調画像(DWIBS法)と特殊な再構成法を用いて実現しました(撮像装置はPhilips)。

Takahara T, Hendrikse J, Yamashita T, Mali WP, Kwee TC, Imai Y, Luijten PR. Diffusion-weighted MR neurography of the brachial plexus: feasibility study. Radiology. 2008 Nov;249(2):653-60.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この画像はインパクトがあったようで、編集長のKressel先生から、表紙採用にするという連絡があり、本当にうれしかったです。主任教授の今井裕先生が、Kressel先生のところでむかし勉強したので、そのおかげもあるのだと思います。今井先生がKressel先生に礼状を送ってくださいました。

 

この画像が得られたことにより、神経原性腫瘍が「本当に神経から生えている」様子を、MRIで示すことができるようになりました。

普通の画像(下)では、紡錘状の形から、神経原性腫瘍を疑うのですが、

MR-Neurographyを撮影すると、脊髄から生えてくる末梢神経(この場合は右C5神経)由来であることがわかります。

また、下の画像の例では、反対側に神経原性腫瘍が写っている事がわかります。

 

神経原性腫瘍には2種類あって、術式が異なります。

下の画像で、上のもの(神経鞘腫; Schwannoma)なら、中心部の腫瘍だけくり抜く(核出術)ことができます。しかし下のもの(神経線維腫; Neurofibroma)では、切断するしかありません。もし細かい画像が得られれば、術式を選べるようになるわけです。

 

2009年当時は、まだMRI装置のパワーは不足気味でしたが、それでもMicroscopy coilというごく小さな受信コイルを用いると、細かく映し出すことが可能でした。

この画像は画期的とも言えるもので、腫瘍周囲を迂回して走行する神経が映し出されています。

この画像の所見を元に、神経切断が必要ない(核出術が可能な)Schwannoma(神経鞘腫)だと診断ができました。

このあとで、Unidirectional Encoding, Subtraction (SUSHI)と重要な技術がみつかり、3部作が完成しました。

New England Journal of Medicine 2009

その後、DWIBS法を改良して、全身の神経描出ができたのですが、この画像は New England Journal of Medicine (NEJM)に採用されました。私達には自身のある研究結果でしたが、山下智裕(やました・ともひろ)先生が無茶振りをして、原稿を「Lancetに投稿したい」というのです。

Lancetは、Natureなどと同じくImpact Factor (IF)が25ぐらいある雑誌です。「それはさすがに無理なんじゃない?」と議論したのですが、彼の強い想いにほだされて投稿。案の定、Rejectでした。

しかし彼は次に、NEJMに投稿したいというのです。IFはLancetの倍(世界で一番IFが高い医学雑誌)なので、どうしてそう思うのか、とにかくあのときはなんか熱病のようになってしました。「まあ投稿するのはタダだしね」と、みんなで笑いながら投稿したのを覚えています。

当然Reject・・・だったのです。が、なんと、Depuity Editor(副編集長)の目に止まり、Rejectの知らせの他に、特別なメールが来ました。画像がすごいから、1例だけの報告として出したらどうかというのです。副編集長がこういうことをいう(リクエストする)のはきわめて希なので、出せば通る可能性が高く、実際に採用してもらえました。

こうして世界ではじめてのWhole body MR neurography(全身の末梢神経描出)が世に出ることになりました。これはNEJMに本当に載っています。 あれほどの番狂わせは一生経験しないと思います。

Diffusion Pre-pulse (MSDE)

その後、米山正巳さんにより、diffusion prepulseを用いた高分解能画像が発表されました [日本語解説のリンク]。

シネマティック・レンダリング

今回のものは、シーメンスの装置を用い、高速化技術であるCAIPIRINHA(カイピリーニャ)と3DのT2強調画像を撮影できるSPACEという撮像法を用い、かつワークステーションで可能なCinematic renderingというVRの手法を用いて表現されたものです。「シネマ」つまり映画みたいにリアルなんですよという意味で名付けられたものです。

2014年のRSNAで発表されました(MRIfan.netリンク

*VR:ここではVolume Renderingのことで、Virtual Realityのことではない

 

 

ちょうど膝窩という、邪魔者が少ない空間に発生したので、うまいこと映し出されており、Cinematic renderingの素敵な質感もあって非常にインパクトのある画像になっています。他の部分ではこのようにうまく出すには相当難しい(一般化はしにくい)のですが、とてもきれいですね。


 

MR-Neurography についての自分の論文と説明は以下のとおりです。

書誌事項 説明
Takahara T, Hendrikse J, Yamashita T, Mali WP, Kwee TC, Imai Y, Luijten PR. Diffusion-weighted MR neurography of the brachial plexus: feasibility study. Radiology. 2008 Nov;249(2):653-60.

 

·    DWIBS法と、Soap-Bubble MIP法を組み合わせることにより、頚部の末梢神経を描出することに成功した。

·    「Radiology」誌の表紙として採用された)。

Yamashita T, Kwee TC, Takahara T. Whole-body magnetic resonance neurography. N Engl J Med. 2009 Jul 30;361(5):538-9. ·    全身の末梢神経描出に世界で初めて成功した。

·    科学誌の中で最も権威のある「New England Journal of Medicine」(Impact factorは50程度=NatureやScienceなどの2倍程度)に採用された。

·    毎日新聞夕刊に掲載された。

Takahara T, Hendrikse J, Kwee TC, Yamashita T, Van Cauteren M, Polders D, Boer V, Imai Y, Mali WP, Luijten PR. Diffusion-weighted MR neurography of the sacral plexus with unidirectional motion probing gradients. Eur Radiol. 2010 May;20(5):1221-6. ·    従来、拡散を検出する勾配磁場は3方向用いられており、末梢神経描出には6方向以上用いることがより好ましいとされてきたが、逆に1方向だけで撮影することにより画質が向上することを示した。

·    ルーチンでの末梢神経描出が容易になった。

Takahara T, Kwee TC, Hendrikse J, Van Cauteren M, Koh DM, Niwa T, Mali WP, Luijten PR. Subtraction of unidirectionally encoded images for suppression of heavily isotropic objects (SUSHI) for selective visualization of peripheral nerves. Neuroradiology. 2011 Feb;53(2):109-16. ·    関節部など、上記方法を用いても描出が不良となる領域について、サブトラクション法を用いて末梢神経描出が可能であることを示した。
Yoneyama M, Takahara T, Kwee TC, Nakamura M, Tabuchi T. Rapid high resolution MR neurography with a diffusion-weighted pre-pulse. Magn Reson Med Sci. 2013;12(2):111-9. ·    MSDEと呼ばれる一種のDiffusion Prepulseを併用することで、通常のシークエンスを用いて高分解能の末梢神経描出ができることを示した。

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