画論25th 〜 画像に正直に生きる 〜 Made for LIFE
2018/01/29
歴代審査員としてお招きをいただく
昨晩は「画論25th」に出席してきた。ご存知の通り、東芝メディカルシステムズが「キャノンメディカルシステムズ」となって初めての画論である。それを記念して、下丸子の広大な敷地内にある、キャノン本社で行われた。
私は大変光栄なことに、「歴代審査員」ということで特別席にお招きをいただいた。 今を遡ること20年ほど前、杏林大学に助手として異動したばかりの私は、故・蜂屋順一 杏林大学主任教授にとりたてていただき、30代で審査員に加えていただいた。
審査員は、ヘリカルCTを開発した片田和廣教授・また順天堂大学名誉教授になられた故・片山仁先生、がんセンターの森山紀之部長など、錚々(そうそう)たるメンバーである。「教授・助教授・講師」などのスタッフの肩書がなく、会社で言えばようやく平社員になったばかりの私が、満場のひな壇に並んで審査の感想を述べるのは、あまりに場違いで気後れした記憶がある。
しかしMRIの専門知識が生きることがとてもうれしく、控室でMRIのフィルムをシャウカステンにかけながら議論をする教授に、「高原くんこの新しい手法のポイントは?」と聞かれるたびに胸をときめかせて技術説明をさせていただいた懐かしい思い出がある。若いときにこのような貴重な経験をさせていただいた蜂屋先生の愛情を思い出し、改めて胸が熱くなった。
当時と変わらない「ディスカッション」コーナーの議論を聞き、また表彰式での緊張の面持ちの受賞者を見て、画像に対する熱意の原動力をみた気がする。加えて、今回はキャノンCEOの御手洗冨士夫氏の講演もお伺い出来て、大変感銘を受けた。広島大学の粟井和夫教授の基調講演や、またキャノンのこれからの製品展開などについても勉強させていただいた。
画像に正直に生きる
その後の意見交換会のことである。久しぶりに参加した「画論」の意見交換会なので、懐かしい面々と再会を果たしたが、そのなかで、ある大学の技師長にもお目にかかることができた。旧交を懐かしんで、ヘリカルCT開発時の思い出などを語り合っていたところ、以下のようにお話くださった。
「私は先生が、『画像に誠実』なところがとても好きで、FBでの発言を楽しみにしているんです。画像の一つ一つがもつ実力に対して、中立的に捉え、言うべきことはきちんというということが、実際にはなかなかできることではないと思っていて、ファンのように感じています。
大学に在籍していると、理事会や病院の事情にも左右されて、さまざまなことを考えます。そうするといつのまにか純粋な気持ちから離れざるを得なくなる場合もある自分に気づきますが、先生の投稿を見るたびに、心が洗われたような気持ちになって、またリセットして頑張れるんです」
・・・こんなにうれしい言葉があるだろうか。
自分は画像の研究をはじめてからこれまで、つねに画像に正直でいようと努めてきた。
研究の為に4年を過ごしたオランダでも、そして日本に帰国したあとでもそうやって生きようと思い、また生きて来たつもりである。その思いを、こんな風に感じてくださる人もいるんだと有難く、これからも画像に正直に生きたいと強く思った。
技術の普及のためには、若干の方便も必要で、なんでもかんでも原理主義のようにしてはうまくいかない。歳を重ねるとともに、必要に応じて婉曲表現も用い、無難な対応も当然するようにはなっている。また、いきなり全部は改善できないなら、まずこの部分だけで満足すべき、という分別も持つようになった。しかし、その中にあっても、初心を忘れずに、良い画像と悪い画像を評価すること、臨床に役立つことと役立たないことを区別すること、患者負担や不利益を最小にすることを原点に考えることは、永遠の価値を持つと改めて感じた。
勇気をくれた友人に心から感謝したい。
Made for LIFE
御手洗CEOの挨拶の中で、東芝メディカルシステムズを買収した話をどのように伝えるのか興味があったが、「東芝メディカルシステムズを迎え入れた」という温かい表現を使われていた。また、キャノンの企業理念である「共生」(共に生きる)に加え、東芝時代から用いられてきたスローガン「Made for LIFE」がそのまま使われていた。旧東芝社員のみならず、我々医療関係者には「東芝」と共に歩んできた気持ちが強いので、この言葉が存続したという事実、そしてそのことを御手洗CEOの口からなんども話してくださったことは、とても皆の心に響いたことと思う。
今、東芝メディカルシステムズから、キャノンメディカルシステムズの社長となられた瀧口 登志夫氏と、懇親会でお話をさせていただく栄に恵まれたが、お話の中で、このMade for LIFEの灯が消えないように頑張った旨をお伺いし、素晴らしいことだと感じた。企業には、あくまでも利潤を追求しなくてはならないという縛りがあり、我々医療関係者とは立場が異なるが、その中でも、患者のために、人のために、「画像に正直に生きる」ことを協力していきたいと思う。新しく船出をするメーカーの皆様にもエールを送りたい。
御手洗冨士夫CEO 発言要旨(録音起こしでなく、メモ起こしなので、大まかな内容であることをお許し下さい)
本日はご多忙の中、お越しいただきましてありがとうございました。この「画論」を拝見させていただいて、患者の負担を減らしながら、臨床的な有用性を「画論」が追求してきたことが良くわかりました。
弊社(キャノン)は、初代社長が御手洗毅(Wikipedia)と申しますが、彼は産婦人科医でございましたから、キャノンはもともと医療を手がけようと思っていたのでございます。81年前の1937年には、結核で亡くなる方が非常に多く、このためX線間接撮影カメラの開発を行い、国内初の製品を完成させました。
その後、医療機器も行っておりましたが、カメラ・プリンターなどの事業が非常に大きくなり、医療まではなかなか多くは手がまわらないという状況でもございました。
そんな事情でありましたから、今回、東芝メディカルシステムズを弊社に迎え入れられたことは、かねてからの夢が叶い、大変喜んでいるところでございます。
キャノンと、(今回迎え入れて、名前が変わった)キャノンメディカルシステムズには、「イメージング」という共通点がございます。高画質な画像を得ることが大変重要であるという理念を持っておりまして、このために、(東芝が持っていた)「Made for LIFE」というスローガンは大変重要であると認識しております。
キャノンには、「世界人類の共生」という企業理念がございます。これは、人を大切にする、人間尊重主義であります。これからは、キャノンメディカルシステムズと共に、いわば「第二の創業」をすることになりますが、再生医療などの先進性に加え、M&A、アライアンス、イノベーションを追求していきたいと思いますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
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