ヒッチハイクはどうやってするのか、何が起こるのか(2)
2018/01/02
東海大学1年生が終わる春休み。旅好きの長根君は、九州に行くことに決めました。格安で面白い旅を希求する彼は、今回はヒッチハイクに挑戦してみることに。自宅を出て長い長い待ち時間のあと、何人かの親切なおばさんのアドバイスも得て移動を繰り返し、ようやく乗せてくれる人に出会えました。一体どんな人が乗せてくれたのでしょうか。
<前編はこちら↓>
1人目のおばちゃんは波乱万丈の人生を歩む人だった
長根:「寒川ICで乗せてくれたおばちゃん。海老名SAまでの短い距離を乗せてくださいとお願いしました。このあと、すべての人に聞かれることになるんですが、おばちゃんは開口一番『いったいなんでヒッチハイクなんかしてるの?』
「西に行きたいからです!」
「それじゃ大雑把すぎるでしょ!」
長根:「でも九州に行きたいのをひと言で表現するには・・・(;´∀`)」
高原:「まあいいや(笑)。それで車内ではどんな感じなの??」
長根:「とにかく3回乗せてもらって、みんなそうだったんですが、お互いのことを話すんですよね」
高原:「なるほどそれはそうだよね。そもそも興味があるから乗せるんだもんね」
長根:「はい、それで、僕のことも話したんですが、おばちゃんの人生が本当にすごかったんです。おばちゃんは、バツイチで、息子3人を女手ひとりで育てたと言っていました。『やっぱりワタシは女だから、男がどう生きるべきかは分からない。だから息子たちには、『近所のおじさんなど、仲良い大人の男に人生を聞いてきなさい』といって育てたのよ』と言ってました。」
「それで、その後がすごかったんです。その後、再婚したんだそうですが、その再婚は、なんと結婚詐欺で、ものすごくたくさん財産を失って・・・」
「えーっと俺、旅行日記を書いてるんでメモ見ます」
えっ、偉い! 日記つけているのか。
それにしてもあまりにも、彼のイメージそのままの日記だ。
はまり役すぎる!笑
「・・・6800万です!!」
「6800万失ったそうです!(ええぇー (@@)) 土地も建物もみんな取られたと言っていました。すごかったです。」
「それで、『海老名SAじゃなくてワタシは厚木ICに行く。厚木ICでやったほうがいいよ』と言われて、本当は海老名SAに行きたかったのですが、厚木ICのところで降りることになっちゃいました(汗)。」
高原:「えーっと、あれ? 寒川ICから乗ったら、海老名SAに行くには東京方面へ曲がるから(大阪方面に行くには)逆になっちゃうんじゃないのそもそも?」
長根:「いえ、あそこは歩いて反対の方に行けるそうなんです」
そうなんだ・・・。知らんかった。変なこと詳しいやつだな〜。
2人目の人は37歳の女性のトラック運転手だった
高原:「それでどうなったの?」
長根:「今度は、トラックの37歳バツイチの女の人が乗せてくれたんです」
高原:「へ〜女の人なんだ。またバツイチの人!」「トラックはやっぱりヒッチハイクで乗せてくれそうだよね」
長根:「いや、それが聞いてみると、実はトラックに乗せていて事故に遭ったりしたときに、会社の賠償責任がでてしまうといけないとかで、最近はせちがらくなって、トラック会社は、運転手さんに対して、「乗せないように」って通達しているんですって。だから乗せるとしても秘密でって感じみたいなんです」
高原:「そうなんだ、割と大変なんだなぁ」
長根:「はい、その人はとても親切でした。自分の相談事きいてもらったり、運転手さんの生い立ちなんかも聞いたりしながら乗っていました。帰りのことも心配してくれて、名古屋からぐらいだったら、知り合いに連絡できるから〜って言ってくれたんですが、帰りはヒッチハイクしないかもと思ったので連絡先も聞かずに降りました。最終的に名古屋の近くの『上郷SA』でおろしてもらいました。」
長根:「自宅は昼に出たんですけど、上郷SAに着いたときにはすでに午後10時近くなので、その時間から乗るというのはやっぱり難しくて、みなSAでだいたい休んでいたりするんですね。なので自分も寝ることにしました。寝袋をベンチの上に敷いて朝まで寝たんです」
上郷SAでライバル出現
長根:「朝、起きて、乗せてくれるトラックを探していたんですけど、そうしたら2人組の人がやっぱりヒッチハイクしようとして看板持っているんですよ〜。ややっライバル出現! と思ったんですが、せっかくなので話を聞いてみました。そしたら・・」
東海大生なんですよ〜
高原:「え〜っ笑」
長根:「それも先輩で、今年卒業するんだそうです。卒業旅行でヒッチハイク! それにしてもなんでここで東海大生に会うんだって思いました笑」
西に行きたいなら西のナンバーの人にお願いする
長根:「あと、SAだと、自分から乗せてくれそうな車を探して声をかけに言ったりもするんですけど、そのときに、西に行きたいなら西のナンバーの人に話しかけるべき、というのを学びました」
高原:「それってどういう意味?」
長根:「えっと、西に自分が行きたいときに、たとえば東京のナンバーの人に話しかけることを考えると、その人は目的地が(その場所から)近い可能性があって、かつ帰り(復路)のことが気になるのであまり時間的に余裕がないことが多いようなんです。ところが西のナンバーなら、帰宅あるいは帰社のことが多いので、そのナンバーのところまで戻る可能性が高く、かつ仕事の目的を果たしたあとで余裕があることが多いため、長い距離乗れる可能性があるとのことです」
なるほど。たしかに行先の方面のナンバーのほうが、行きやすくなりそうですね。
3人目は車を売買しながら全国を旅する人だった
長根:「それで、3人目の人は50代の夫婦でした。乗せてくれたのがすごい特殊な車両で、バスなのですが、身障者用の車椅子を乗せるために、通常の座席が外されているんです。そうすると定員が少なくなって、普通免許でも運転できるので、欲しい人が多いんだそうです」
注:調べたところによると、定員10名以下、車両総重量(人間含む)で5トン以下であれば普免で運転できるそうです(参考リンク)
「その人はものすごくたくさんの種類の免許や資格を持っていて、クレーンとか、牽引とか、バスとかの免許を、20種類ぐらいだったかな、持っているんだそうです。それで、その人は、あるところ(例えば東京)で車を買って、その車を別の遠いところ(例えば徳島)の人にオークションで買ってもらい、そこまでその車を持って行って売り、これを繰り返して全国を旅しているということでした」
高原:「ええ〜なにそれ。そんなことって可能なんだ。面白い人だねぇ」
長根:「そうなんです。だから特殊なバスに乗っていたんですね。ちなみに、その方は、子供を6人作ったそうで、福島で生計を立てていた方で、頑張って働いて1000坪ぐらいの土地を得て、中古車販売・修理をしていたそうですが、原発事故のために、放射能の風評で車が取り扱えなくなってしまい、とうとうやめてしまったとのことでした」
高原:「・・・そうなのか、それは理不尽だな。しかしそうか、だから車に詳しいので、売ったり買ったりがオークションでできるんだね」
長根:「はい、詳しくは聞けなかったのですが、資格を持っていると、『籍を置いてくれるだけでいいから』って雇ってくれる会社があるんですって。会社がなにかの事業をするときに、たとえば「牽引免許のある人がいないとダメ」だという法規があると、資格を持ったひとを名簿上置いておかないといけないんですね。」
高原:「名義貸しみたいなもんだ」
長根:「そうみたいです。だから、毎月ある程度の固定収入があるので、あとは車の転売をしながら全国の旅をしているんだそうです」
高原:「本当にみんな、波乱万丈の人生の人ばかりだったんだね」
長根:「はい、とくに最後の人は、なんか『ロック』な人で、熱かったです。いろいろ人生のこと教えてもらいました」
みんな初めてヒッチハイカーを乗せるひとだった
長根:「あと驚いたのは、3人共、『はじめてヒッチハイクするひとを乗せた』って言ってました。『いままで乗せようかと思ったけど、危ないかなとか思ってやめてた』って」
高原:「そう!それそれ!! 僕もまさにそう。でも今回の話きいたらなんだか乗せてあげようと考えたよ」
大津SAで・・・
長根:「それはありがたいです!」「ところで大津SAで一度休憩したんですが、その時びっくりしたことに、あの2人組がまたいたんです!!! 東海大生だし、世間は狭いな〜と思いました。でも、彼らは短い区間しか乗せてくれない人ばかりだったので、6回乗り継いで来たんだと言っていました。3回で来れた自分はだからラッキーみたいです」
高原:「うんうん、長根くんはラッキーそう!」
その後、3人目の人が京都まで行くということで、京都に連れて行ってもらったそうです。すでに2日目も宵の刻になっていたので、京都では安いホテルに宿泊し(さすがに京都の街なかで野宿していると、警察のお世話になると良心に迷惑がかかるので)、一週間でバイトに復帰をしなくてはならないけれどこのスピードだと九州までは達することができないと思い、翌日から青春18きっぷで九州を目指すことになりました。
感想
長根くんに改めていろいろと聞いてみたのですが、「やってみよう精神」が大切だと思っているということと、もうひとつは「みんなで旅するのもいいけれど、今は一人で旅することにしている。」ということでした。「一人でやることの重要さというのを割と考えていて、例えば勉強を2人で図書館でやっていても、実際にしているかどうかは自分自身の問題なので、自分だけでやるという意味で、一人旅をしている」とも言っていました。
なるほど確かにそうです。勉強のことは、そうだよね。「きっかけづくりで2人で図書館」というのはとても良い試みだけど、集中してやり遂げるかどうかはその時その個人の気持ちだからね。
彼がはじめてヒッチハイカーを乗せる人たちと出会えたのは、人生を色々経験した今回のドライバーさんたちが感じることができる、彼のにじみ出る人柄がそうさせたのかな〜と思います。
一回話を聞いたあとだとできそうだけど、自分で最初3時間ぐらい、一回も乗れないまま、不安なまま、ダメかもしれないと思いつつ、時間を過ごしているわけですよね、それもみんなの前でずーっと立ちんぼで、何百回もの笑顔で。結果がわかっていればできるかもだけど、結果がわからないなかで、よくもまあ諦めないでやり続たものです。何人かの日本の通りがかりのおばさんも素晴らしい。これで日本が成り立っていますね彼女らが声をかけてくれなかったら振り出しに戻ったかもしれません。
そのアドバイスを受け入れて、そして最後に実現するわけなんだ。
乗せてあげるのが楽しみ!
私の方の感想は、とにかくいろんな人がいるんだということを目の当たりにしてとにかくびっくりしました。3人の方は、ものすごく強い。6800万を失っても、1000坪の土地を使った事業がダメになっても、生きている。生活している。
それぞれの方にいろいろと僕自身も聞きたい、もし自分が乗せてもらったら、やっぱり話をいっぱいするだろうなぁと思いました。
もうひとつ重要なことですが、一般道から高速へ乗る最初のステップが難しいと聞いたので、ぜひ今度は、東京ICの入り口などで看板持っている人がいたら、短距離、たとえば海老名SAまででも(その前の港北PAまででも)乗せてあげようと思いました。それを知ることができただけでも、こちらも勇気が出ます。
その日がいつくるかは分かりませんが、そんなに遠くではないように思います。そのとき出会った人と話をするのが楽しみです。
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