テスラ「自動運転」事故、欠陥は見つからなかった→ リコール求めず 米運輸省
2018/01/02
システムに欠陥がなかったそうで、これは良いニュースです。
【要旨】
- システムに欠陥はなかったので、リコールは不要
- アイサイトなどで実現している事故率低減(自動ブレーキ)に比較して、さらに40%の事故低減ができていた(=つまり、さらに安全になった)
- イーロンは、90%の事故低減を目指している
- これが「運転支援機能である」ことをテスラは十分にユーザーに通知していたので、通知義務についても問題なかった
- その後のアップグレードにより、死角にある前々車も認識可能になった。
米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は、オートパイロットが運転支援機能であり、テスラはドライバーに、この事(限定した機能であること)を周知する義務があることを述べた上で、この周知義務はオンラインサイトでの通知などを通じてドライバーには必要な情報が開示され利用可能であり、テスラのオートパイロットの運用方法についても問題がなかったと結論づけています。
【ニューヨーク=中西豊紀】「自動運転」モードの車が死亡事故を起こしたとしてテスラモーターズを調査していた米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は19日、「欠陥は見つからなかった」とする報告書をまとめた。調査は終了しリコール(回収・無償修理)も求めない。
調査はテスラ車が昨年5月に起こしたトラックとの衝突事故が発端。「オートパイロット」と称した機能を持つテスラ車は、高速道路での車線変更や追随走行が自動でできる。また衝突の危険があれば自動でブレーキが利くようになっている。NHTSAはこうした技術に瑕疵(かし)が無いか分析を進めていた。
「シロ」が明確になったことで、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「非常に前向きな内容だ」と自身のツイッターに投稿した。報告書には「オートパイロット機能が入っていることで、非搭載車と比べ衝突事故が起きる割合が約40%減る」とのデータが記載されているが、マスク氏はこれもツイッター上で紹介した。
米国ではテスラの事故以降、自動運転車の安全を巡る議論が高まった。NHTSAが昨年9月に安全指針をまとめるなど、規制当局の動きを早めるきっかけにもなった。NHTSAはこの日、調査の範囲においてテスラ車には問題が無かったとしながらも「衝突回避機能には限界もある」として、運転手の自動化への過度な依存に警鐘を鳴らしている。
40%の事故低減は、「アイサイトよりさらに低減した」ということ
多分、「40%低減」というと、なんだそれならスバルのアイサイトのほうがすごいじゃないか、と思う人がいるかもしれません。そうではないのです。
・アイサイトは 非装着車(A) vs 自動緊急ブレーキ装着車(B)を比較
Aに比べて、Bの方が60%も事故を低減できた(追突事故に限れば80%)。
と言うものなんです。テスラは、自動運転が始まる前にすでに (B)の状態でした。
だから今回テスラの自動運転は
・自動緊急ブレーキ装着車(B) vs 自動運転機能装着車(C)を比較
して、自動緊急ブレーキ装着車に対してさらに40%減ったというものなのです。(*注:一部には(A)も混じっているかもしれません。これはReportに明示されていません。しかし、自動運転(自動ハンドル; auto steerなど)が始まる前に、すでに自動ブレーキ機能は提供(ソフトウエアダウンロード)されていました)。
さらに、今後、ソフトウエアの改良により、90%の低減を目指すとツイートしています。
批判して安心する風潮が「危ない」
わずか半年前に、多くの人が「危ない、危ない」と批判しました。あのときに批判した人は、データを示さずに、「危ない」と言っていました。
そうなんです、データ。
・人間が自分の運転で引き起こす事故率(A)・・・居眠り・スマホ・疲れ・踏み間違い 等
・自動運転モードが惹き起こす事故率(B)・・・誤認識 等
このどちらが小さいかを考えると、全体安全がわかります。当たり前ですよね。
ところが、(B)において死亡事故例があった一例を「危ない、危ない」と述べていたのです。たしかに危ないかもしれない。これは科学的には「印象」とか、「仮説」と云います。
その印象や仮説(危ない)を証明するには、データが必要です。データがないと、危ないのかどうかがわかりません。データなしに批判することは意味がないばかりか、Move Forwardの精神を妨げ、不要な萎縮を招きます。
我が国にとって一番怖いのは、「批判しただけで安心してしまう思考停止」だと感じます。日本はとくに、このことに注意が必要だと思います。
7月からの半年で、テスラは以下の改善を成し遂げています。
1)レーダー解析機能を改善し、2台前も見えるようにした
これは首都高で渋滞中の写真です。自車の前にレガシィが停車していますが、その前は死角で見えませんね。
ところが、自動運転機能のレーダーでは、レガシィの前の車両も認識しています(上の写真と下の写真は時刻的に僅かなずれがあるので、前方スペースが空いていた左のワゴンは少し進んでいます)。
どうしてこのようなことができるかというと、ソフトウエアの改良により、前車の下をくぐり抜けるレーダー反射波、道路脇の壁から来るレーダー反射波を解析して、前々車も認識できるように改良したからです。例の死亡事故が話題になってわずか4ヶ月後の11月にはこの機能が追加されました(インターネット接続により、車にダウンロードされました)。
これにより、(死角にある)前々車が減速した段階から、自動運転は減速を始めるようになったので、よりスムースに減速するようになりましたが、これが功を奏して、下のような、大変印象的な事故防止の事例が発生しました。
この動画で明らかなように、ドライバーからは完全に死角のところで起きた事故による前々車の減速を自動運転が検知し、アラート音を発し、自動減速をはじめました。「これは”super-human” responseだ」ということで話題になったわけです。
2)ハードウエアを改善し、カメラを1台→4台もしくは8台に増やした
そして、完全自動運転を達成できるほどのハードウエアを搭載した新型車両を、昨年末から出荷しています。これについては、別の記事を御覧ください。
データなしに批判をすることのいかに虚しいことか、そして、速やかに改善を進めることの重要さがいかに尊いかがわかると思います。批判をしている人に気を取られて立ち止まると、あっという間に遅れを取る分野です。
なお、事故のときに私が書いた記事は以下のようなものです。このような論調のものはほとんどありませんでした。
(了)
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