「君の名は。」を3倍楽しめる、美彗星の秘密 その4 流れ星はなぜ降るのか
2018/01/03
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その4 流れ星はなぜ降るのか
「君の名は。」ででてくるティアマト彗星は、沢山の流れ星を降らせました。
その様子は、2001年のしし座流星雨にヒントを得ているように見えます。そこで、しし座流星の説明をしたいと思います。どうして流れ星は朝に多いのか、などの解説もしました。
2001年のしし座流星雨は、世界で初めて「予測できた」ことで有名です。その恩恵で、日本でも何百万人という人が見ることができました。ちなみにその時の動画がYouTubeに出ています。本当にきれいですね。実際の目ではもっともっと見えたんですよ。
アリゾナの隕石クレーターが糸守町のモデル?
その話は少々難しいので、その前に、隕石が衝突して出来た、アリゾナのクレーターの写真を掲示します。糸守町の風景は、このアリゾナの隕石クレーターにとても良く似ていますね。流れ星の中には、とくに大きいものがまれにあり、地球に届いてこのようなクレーターを作ることがあります。
流れ星とは何か
これはみなさんご存知ですね。宇宙のゴミに地球が衝突すると・・・大気との摩擦で燃えて光ります。これが流れ星。大体1mmのゴミで、1等星以上に光ります。これは速度がすごく速いから。秒速50Kmぐらい、つまり時速で18万キロぐらいです。
地球はどのように動いているか
これも、知っていますね。もちろん太陽の回りを回っています。北側からみると、地球はこのような方向に回っています。
なぜ流れ星は朝に多いのか分かっちゃおう!
夜が昼になるところが「朝」ですよね。これを図に書きましょう。右側が朝ですよね
そうです。
みなさん驚きました?
地球は常に朝の方向に進んでいるんです!
なんと地球の前向きなことか。逆に回っていたら進化は起こらなかったに違いない...。
じゃあ流れ星が降ってくるところは、朝を中心とした右側なんです。昼側のところでは見えませんから、よく見えるところは未明という事になりますね。だから良く3時頃と〜薄明が始まる前が最も見えやすいと言うのです。
しし座流星群はなぜ「しし座」から降ってくるのか
この流れ星は、彗星の軌道上にばらまかれたチリに地球が衝突することによって起こります。しし座流星群のチリは、テンペルさんとタットルさんが発見した「テンペル・タットル彗星」がばらまいていきます。テンペル・タットル彗星の軌道は左図の通りです。彗星(およびチリ)はピンク色の矢印の向きからやってきます。一方地球は青色の向きに動いていきます.
この結果、両者のベクトルを合わせた(差の)方向から降ってくるように見えます。その方向がたまたましし座である訳です。そうすると、このようにしし座から飛んでくるように見えるわけです。
しし座流星「雨」ー アッシャー博士の世界初の予言
1999年まで、流星群の予測はまったくあてにならないものでした。もちろんしし座群も、正確な予報はできなかったのです。しかし英国のDavid Asherという博士が初めて予測する方法を考案し、この予測はきわめて正確であることがわかってきました。
そこで2001年の日本における大出現は、おそらく確実に起こると考えられ、大騒ぎになったのです。では、どのようにして予報が行われるようになったのかを解説します。
1998年
1998年は、テンペルタットル彗星が33年周期で戻ってくる年だったので、沢山の出現が期待されていました。
テンペルタットル彗星の軌道の近くを通る時刻(これは正確にわかる)から、最初にBの時刻に流れ星が沢山現れることが予測されました。
たしかにBで、あるていどの出現(だいたい100個/時)が起こったのですが、なぜかAの時刻にもっとたくさんの流れ星が流れたのです。これがきっかけになって大発見が起こりました。
この2つの出現のピークには、2つの大きな違いがあることがわかりました。第1に、AとBでは、Aのほうがなだらかなピーク(裾野が広い)であることが分かります。
第2に、AとBでは、明るい流れ星(つまりゴミが多きいもの)の割合に大きな差があり、Aのほうが明るい流星が多いことがわかりました。
世界で初めての発見
そこでAsher博士は考えました.
1) 裾野が長い=彗星がチリを撒いてから時間がたっているので、裾野が長くなる。
2) 明るい流星が多い=大きいゴミが多い=時間が経つと、小さなゴミは、慣性質量が小さいので軌道から散逸するが、大きなゴミは慣性が大きい(軌道上にとどまろうとする)ので、1)の推論と同様に,彗星がチリを撒いてから時間が経っていると考えられる。
→1) と2)から考えて、地球は2つのチリの軌道と交差したと考えられる。
Aは、古くに撒かれた軌道
Bは、新しく撒かれた軌道
摂動(せつどう)により軌道は少しずつ変化する。
本当は、軌道はいつも同じところにあるはずですね。でも木星のような大きな惑星によって,軌道は常にすこしずつ修飾をうけて、ずれるものなのです。このような影響のことを,摂動(せつどう)といいます。
ですから、もともと同じ彗星から撒かれたチリであっても、たとえば1966年に接近したときに撒かれたチリの軌道と、1999年に接近したときに撒かれたチリの軌道は,わずかに違うところを通ります。このようなわずかな違いのなかを地球が通過したのだと考えられました。
そこでAsher博士は、彗星と木星の重力の影響をしらべ、過去のゴミがどこを飛んでいるのかを計算しました。
その結果、以前は知られていなかった1333年(600年前)のときに撒かれたチリの軌道が、地球と交差していたことがわかりました。
これがAに相当します。また、通常のPeak Bは、1965年のときの軌道上のチリによりもたらされたと考えられました。この図は、向かって右側に地球が動いていく説明図になおしてあります。
楕円形は、チリの軌道が。地球の軌道平面と交差する領域を示しています。(斜めに交わるので楕円形)。楕円形が地球の軌道(青線)に近ければ近いほど、流れ星が沢山ながれるはずです。また楕円形(チリ)が撒かれた年が最近のものであれば沢山のチリがあり、流れ星が沢山流れるはずです。
右の方に1800年代のチリの軌道がありますが、古かったし、地球の通り道から遠かったので,このピークはほとんど出現しませんでした.
1999年:初めて予報が当たった
このような仮説は、1999年に正しかったことが確かめられました。彼の理論では、この年、1899年のチリの軌道がほぼ地球の通り道に一致するので、いわゆる「流星雨」になることが期待されたのです。
予測は見事に適中し、矢印部分でヨーロッパで時間5000個の流星雨が見られました。
人類が、初めて流星の出現をピンポイントで予測し得た瞬間でした。
2001年 :日本における大出現
そして2001年は、1767年、1699年、1866年のピークが地球の軌道の極めて近傍にあったため、日本時間2:31と3:19に、日本で流星雨が見られると予報されたのです。
下の図は、日本時間午前3時19分に、しし座(つまり流れ星の降ってくる方向)から眺めた地球です。向かって右側は昼なので、流れ星は見えません。また日の出直前の部分でもよく見えません。
たくさん見えるのは,この地球のなかの左側の夜の部分(白く表示),それも真ん中に近いところなのです。33年に1度のチャンスのときに、どれだけ日本が有利な位置にいたかがお分かりかと思います。
そして流星雨は出現した。
そして、本当に、2001年の日本の夜空には、流星雨が出現しました。このときの感動は忘れられません。きっと著者もご覧になったのではないかと思います。AstroArtsの「あなたが選ぶ21世紀10大天文ニュース」に選ばれています。
1833年にには、1時間に10万個の星が流れたそうです。ティアマト彗星も、そばで分裂したので、すごくたくさん流れたことでしょうね。
です。
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