線虫を使って癌を早期発見 – 開発者の広津崇亮(ひろつ・たかあき)先生にインタビュー (6):陽性反応がでたとき・・DWIBSの出番もある?
2017/04/24
DWIBSの出番もある?
僕はこのすごい方法のニュースに触れたとき、DWIBS法のもっている2つの役割=「癌のスクリーニング」+「治療効果の判定」、のうち、前者はほぼ不要になるなと思いました。
しかし広津先生とお話しているうちに、あらっ?それならまだ役立つかも?と感じたのです。それはなぜか。
これは論文に掲載された健常者と患者さんの反応をまとめたものです。
統計解析に慣れていない人にはちょっとややこしいので、すごく単純化してグラフにすると、まぁこんなふうなんですね。
ほとんどの人は青丸で、「検査が陰性」→「がんがなかった!」と言う人ですね。一方赤丸の人は残念ながら「検査陽性」→「癌がやっぱり発見された」という人です。とてもつらい気持ちになると思いますが、すぐに治療に入れます。分からないで放っておいたらタイヘンなことになっていたので、その意味ではよかった。
問題は、黄丸の人です。「検査陽性」だから精査したけど、見つからない!
「キマル(黄丸)」なのに、癌があるのかないのか、キマらないんです。ダジャレ乙。
あるはずなのに、見つからないジレンマ?
このような患者さんは、フルスタディをひとしきりやったあと、途方に暮れてしまうことになります。どこにあるかが正確にわからないと治療に入れませんし、ありそうだけどないかもしれないし、宙ぶらりんの状態が続きます。
だからといって、放射線を使う検査は、そうそう短い間に繰り返しできません。CTを毎月撮るというのは、普通は「がん疑い」だけの患者さんにはできませんし、ご本人も毎月被曝はやりたくないことでしょう。さらにPETは放射線被曝がある上に、コストも高い*ので、短期間の繰り返しは無理です。
この研究の対象になった患者さんで、検査陽性がでたあと2年後に癌が見つかるようになった人もいるようですので、調査が長丁場になることを想定しないとなりません。その意味でDWIBS法なら、無被曝のMRIですから、繰り返し行えるというメリットがあります。
いま、浜松市にある「すずかけセントラル病院」では、年3回のMRIも含めた、日本ではじめて(当然世界でもはじめて)の「くりかえし癌ドック」をしています**。ひとりひとり丁寧に面談していることもあって、受信者からの評判はおかげさまできわめて良いのですが、「健康(無症状)」と思っているうちに続けていく高い意識を維持するのはなかなか大変です。でも将来、線虫の検査で陽性だった方を対象として、みつかるまでこれを繰り返していくのは良いなと思いました。
* 自費であれば1回10万円以上します。また「疑い」の段階ではほとんど保険適用はされません。
** プレミアムドック http://suzukake.or.jp/kensin/health-screening/premium-medical-dock/
↓年3回の準無被曝がんスクリーニング
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