線虫を使って癌を早期発見 – 開発者の広津崇亮(ひろつ・たかあき)先生にインタビュー (5)も う一つの幸運〜匂いの濃度と嗜好性の関係
2017/04/24
もう一つの幸運〜匂いの濃度と嗜好性の関係
この研究には、もう一つの幸運があります。「匂い」には「いい匂い」と「嫌な匂い」がありますが、意外なことに、いい匂いのものでも、濃度が異なると嫌な匂いになることがあるんだそうです。
たとえばジャスミンはとても良い香りで、リラックス効果があると言われていますが、濃度が高くなると糞尿臭として感じられるのだそうです(ひょえ〜)。
(イラスト:さいとうかなえ)
このようなことは、広津先生は研究して良く知っていたので、がん患者の尿を用いた実験をするときに、原液だけでなく、様々な濃度の希釈液で実験を繰り返し、「10倍希釈の尿」が、がん患者と健常者をよく弁別出来る適性濃度だということを見出しました。
↓これは、尿ではなく、がん細胞の培養液に対する反応を調べたグラフ[論文*から引用]ですが、横軸は、この培養液の希釈率を示しています。縦軸は化学走性(Chemotaxis)であり、棒グラフが長いほどよく反応していることを示しています。これをみると、10のマイナス6乗ぐらいの希釈率が至適であることが分かりますね。
*Takaaki Hirotsu*, Hideto Sonoda*, Takayuki Uozumi, Yoshiaki Shinden, Koshi Mimori, Yoshihiko Maehara, Naoko Ueda, Masayuki Hamakawa (*同等貢献). A highly accurate inclusive cancer screening test using Caenorhabditis elegans scent detection. PLOS ONE(2015)
もし様々な濃度の実験をしようと最初からプランしていなければ、原液のみを用いて実験し、「がんと健常者は識別できない」という結論で終わっていたことでしょう。嗅覚研究に詳しい広津先生が実験計画を立てたことが、この画期的な成果につながったものと思われます。
この検査が実現したらDWIBS法*も要らないなぁと思ったのですが・・・。
*DWIBS法:MRIの拡散強調画像(DWI)を用いて全身の癌を表現する画層診断法 [リンク]
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