線虫を使って癌を早期発見 – 開発者の広津崇亮(ひろつ・たかあき)先生にインタビュー (3)化学走性を用いてがんを診断
2017/04/24
(3) 化学走性を用いてがんを診断
ここでは「化学走性(Chemotaxis)」という言葉がでてきますよ。
↓こちらが実際に行った健常者の尿(10倍希釈)を左の2つのプラス印のところに各々1滴垂らしたものです。尿の反対側によりたくさん集まっていますから、忌避行動をとっていることになります。広津先生によると、「線虫は、『ヒト嫌い』」なんだそうです。俺たち人間はキラわれているらしい・・ (^^;)
↓ところが、なぜかがん患者の尿には逆に集まるのです!
このように線虫は、がん患者の尿の中に含まれる何かを好み、その方向へ走行することがわかります。不思議ですよねぇ。
↓匂いのある方に移動した線虫の数と、反対側に移動した線虫の数を引き算し、総数に対する割合を±で表示したのが化学走性(Chemotaxis;ケモタクシス)というそうです。広津先生からいただいた下のスライドの式を見てください。
上記において、「イソアミルアルコール」「ベンズアルデヒド」とかが書いてありますが(赤棒)、これは線虫が好きな匂いです。がんの患者さんの尿はこれに相当します。逆に「ノナチン」はキライな匂い(紫棒)で、健常者の尿はこちらに相当します。
ちなみに、最初に線虫を真ん中においてから、反応を見るまでに30分放置するんだそうですが、せっかく匂いのところに来ても、「匂いに飽きちゃう」と、またプラプラどこかへいってしまいますね。僕なんかは気ままな性格だから同じようなタイプ(?) ・・っていう冗談はさておいて、そうなってしまうと診断できないから、印のところにはコワ〜イもの 。・ヾ(。>д<。)ノ・。゚ を置いておくんです。
それは、アジ化ナトリウムという物質です。これを混ぜておくと、そばまで来ると麻痺しちゃって動けなくなるので、「飽きちゃう現象」を防止して確実にカウントできるというわけです。
この「匂いの科学」はものすごく奥が深いようなのですが、専門的なので、次は、どうやってこの画期的な方法が発見されたかのエピソードを書きますね。
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