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放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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乳癌スクリーニング革命(1)〜クール教授と短縮MRI・遺伝子変異〜

      2017/04/24

このページのアドレスは、

http://tarorin.com/mrict/2016/08/breast_cancer_dwibs/

です。

はじめに

私がこれから書こうとすることは、「乳癌にかかりやすい人」に近い将来起こるであろう、画像診断の革命についてです。

「造影剤なし」「被曝なし」「痛みなし」の10分MRI

MRIを用いて、DWIBS(ドゥイブス)と呼ばれる撮像法を用いた診断により、「造影剤なし」「被曝なし」「痛みなし」で10分以内で検査完了できる未来がきます。

今日(2016/8/31)の段階では、それをまだ信じる人は少ないと思います。しかし、私には、自らMRI撮像も出来る(撮像パラメーターが分かる)研究者、その中でも拡散強調画像を専門にしてきた者として、それが間違いないものであろうことが見えます。

より重要なことは、この技術は、高品質MRI装置を有する病院が、「撮像条件を改めれば」、直ちにでも適用可能であるだろう、ということです。私は撮像条件に関するコメントをこの文書をWebにアップすることで、この革命を加速したいと考えています。

クール教授と、造影剤を用いる「短縮MRI」

ドイツには、Kuhl(クール)先生という、乳癌の画像診断では神様のような人がいます。英国首相を務めたサッチャーさんを髣髴(ほうふつ)とさせるとさせる、鉄の女のようなイメージの先生で、信じたことはどこまでも強い意志で進むという方です。

使っているMRI撮像技術があまりに古めかしいので、「Dinasor(ダイナソー、恐竜)」と言われたこともありますが、最近、造影剤を投与して行う「短縮MRI」というコンセプトを発表し、これはかなり正しいアプローチだと話題になっています。

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短縮MRIは英語では、Abbreviated MRI(AB-MRI)(アブリビエーテッドMRI)といいます。abbreviationというのは、たとえば ”Magnetic Resonance Imaging (MRI)” の()内のような省略形のことです。それを詳しく話す前に、「遺伝子異常があるために、乳癌にかかりやすい方」の話をします。

遺伝子変異とハイリスク患者

人間の遺伝子のなかに、BRCAという遺伝子があります。これはDNAを「修復する」機能を持っています。DNAは絶えず損傷しています。紫外線や放射線を浴びれば、一部が壊れてしまい、常に修復がなされています。これを手助けするのがBRCAという遺伝子です。

もしこの遺伝子に変異があり、うまく働かないと、壊れたDNAを持つ細胞が癌化することがあるのです。乳癌になった患者さんの中では、このBRCAがうまく働かない人が5〜10%いると言われています(リンク

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これらの方は、生涯のがんリスクが50%以上あると言われていますから、無視できない問題です(ちなみに、遺伝子変異のない普通の人でも、生涯の乳癌リスクは、なんと12%もあります ≒ 女性は12%の確率で乳がんになる)。

最近では、有名な女優さんが、「まだ」がんになっていないのに乳房を切除してしまうという思い切った予防治療を行い、話題になったことを覚えていらっしゃると思います。

BRCA遺伝子変異と、X線マンモグラフィ

BRCA遺伝子変異があると、DNAが壊れたときに修復できないのですよね。では、そのような人に「乳癌を発見する目的で」X線マンモグラフィを行ったらどうなるでしょう。

マンモグラフィで用いるX線は、とても少ない線量です。しかし、それが放射線であることには変わらないので、ある一定の確率でDNAを損傷します。普通なら、そういった損傷はすぐに修復されるのですが、遺伝子変異がある方は、これがなされにくいのです。

DNAが損傷した(ままの)場合、がん化することがあります。そうすると、良かれと思ってしたこと(X線をあてて乳癌を発見する)が、逆に乳癌を誘発してしまう、という懸念があるわけです。

この話のバックグラウンド

これからお話することは、主に、

  1. 本年5月にシンガポールで開かれた国際MR学会(ISMRM)でクール教授から伺った話(講演と、pesonal communication)
  2. 2004年に自分が考案し論文発表したDWIBS法(ドゥイブス法)という技術
  3. 本年3月にオンライン発表されたRadiology誌(最も権威のある放射線関係の科学誌)の論文

の3つに基づいています。(続く)
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