放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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第76回 市民のためのがん講座@広島(乳がん検査法の進歩)

      2018/03/02

広島県民文化センターで「第76回 市民のためのがん講座」(NPO法人「がん患者支援ネットワークひろしま」主催)で、講演を務めさせていただきました。演題名は「乳がんMRI検査法の進歩」です。

↓日曜日の午後にもかかわらず、多くの皆さまにお越しいただきまして大変有り難いことでございました。事前にこのことをFaceBookで書いたら、広島在住の妹の友人や、高松の技師さんもお出でになっていただき、光栄でした。

第一演者として、原爆放射線医科学研究所・腫瘍内科の角舎学行(かどや・たかゆき)先生から、マンモグラフィと超音波、最新の乳房用PET、また広島大学で最近研究開発を手がけている携帯型の新型診断装置の話などをいただきました。

私は第二演者として、MRI関係の話をさせていただきした。こういった会ではかならず最初に、テスラの話とか、ライザップで痩せた話などをして、笑っていただきます。それだけではなく、訪れた都市で面白いこと(もの)を見つけたら、必ずその写真を出すのですが、これはその一枚です。

↓講演前に原爆資料館に行った帰り、世界遺産・宮島行きの遊覧船乗り場に掲示されていたマーク。
すごくテスラに似ていて、遠くからは、テスラの充電器があるのかと思いました笑。

↓また、MRIで、いろんな面白い診断ができることをできることを示しました。例えばMRIでは便秘の診断ができたり・・・

benpi

便秘のMRI

↓カップスープをどうやって混ぜるかの研究ができたり・・・

↓あるいは冷え性の診断ができたり・・・といったものです。

冷え性のMRI

↓次に、研究内容として、がんや脳梗塞の診断に使われている拡散強調画像(DWI)や、その一手法であるドゥイブス法(DWIBS法)を用いたがんや転移の診断についてお話しました。非常に熱心に聞いていただきました。


さて、本題では、通常の診療で用いられる造影MRIの役割についてまずお話しし、会場のみなさんと一緒に画像を見るような雰囲気で、お話をしてみました。わかりやすくするには、会場の人も「一緒に診る」ということがとても有用だからです。

広がり診断から化学療法(抗がん剤)の治療効果判定、またダイナミック撮影、月経との関連のことまで触れましたので、かなり込み入った話ですが、みなさんしっかりついてきてくださって、おそらくほとんどの方に、造影MRIの意味がきちんと分かったという手応えがあり、大変うれしく思いました。スライドは東海大学で乳がんを研究している風間俊基講師が貸してくれたものを一般のみなさん向けにモディファイしました。この場を借りて御礼申し上げます。

痛くない乳がん検診(無痛MRI乳がんドック、ドゥイブス・サーチ)

つぎに、いま行い始めた、造影剤を使わない、痛くない、乳がん検診(無痛MRI乳がんドック、ドゥイブス・サーチ)についてお話をしました。

↓マンモグラフィでは、高濃度乳房では診断能が落ちるが、
ドゥイブス法では高濃度乳房でも影響が少ないので、任意型の検診としては有望であること、

↓MRIは、アンテナで「周り」を撮影するので、死角がなく、脇の下や胸壁などもしっかり写ること、

痛くない乳がん検診

 

乳がんは、肺がんや大腸がんと異なり、30〜50歳代の働き盛りに起こるので、マンモグラフィでカバーできない*ところを、MRIはカバーできることをお話しました(*X線を使うマンモグラフィは、被曝との関連において、若い人には推奨されない)。

↓また、5年前の2013年に提唱されたガイドラインでは、最低の推奨度(グレードC2; 科学的根拠がなく、行わないように勧められる)としていること、

↓しかし、その後の2015年と2016年に相次いで「造影MRI≒DWIBS法」であるという報告が行われたこと、

↓従来多くの人が「画質が悪い」と思っているのは通常のDWI(拡散強調画像) のことで、DWIBS法(ドゥイブス法、左)は全く画質が異なり良好なこと、

↓実際に行った検診の初期成績(「無痛MRI乳がんドック」)では、厚生労働省のプロセス指標を余裕でクリアしたこと、

↓しかし、どの装置でもできるわけではなくて、たとえ「良い装置」を選んだとしても、USBでパラメータをコピーして行っただけでは同じ性能がでないこと、

↓画質の調整を、高度な診断眼で見て、メーカーに画質調整をしっかりとお願いすることで、はじめて良好な診断能が期待出来るようになること、

造影MRIは、造影剤を用いて「信号を増やす」のでどんな装置でも合格点の画像が得られやすいが、拡散強調画像(DWI)では、「信号を下げる」命令をだして病変を映し出す方法なので、すこしでも撮影装置のノイズがあると容易に病変が見えなくなること、

同じ患者さんの画像でも、大きく差があり、診断できる場合と出来ない場合が、装置間で生じていること、

などをお話してきました。

この講演は、広島平和クリニックの廣川裕院長先生にお招きをいただき、担当させていただきましたが、一般の方にお話する機会をいただいたことで、改めて説明方法の改善ができまして、大変ありがたく思っております。

先日の第27回日本乳癌画像研究会では、大会長の植松孝悦先生のご高配で、セミナー講師として専門家の前でお話する時間を設けていただきました。

座長は、私の聖マリアンナ医科大学時代の上司で、かつガイドライン策定責任者の中島康雄先生がしてくださいました。中島康雄先生には、私が代表世話人を務めるBody DWI研究会においてつくりました「乳癌DWI画質検討委員会」の顧問になっていただいております。

講演の最後には、ガイドラインの策定された5年前にはエビデンスがなかったが、それ以降にある程度のエビデンスが論文として報告され、かつ今回の好成績も得られたこと、などから実態に合わなくなっているので、ガイドライン上の推奨度変更をお願いをさせていただきました。また今後、中島先生のご指導のもと、「乳房MRIのあり方委員会」(日本乳がん検診学会)に今後参加をさせていただき、議論を深めていきたいとおもっております。

この2つの講演をさせていただいたことにより、今後の拡散強調画像の精度管理や、ガイドライン再検討のお願いなども含め、ある程度の道筋ができました。今後も画質向上に務めて参ります。

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