放射線科医・MRI専門家の高原太郎個人ブログ

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ドイツ・アーヘン訪問 〜 非造影乳癌MRI検診の提案

      2018/01/02

アーヘン(Aachen)

ドイツのアーヘン(Aachen)にやってきました。アーヘンは、左下の ● で示す、ドイツ・ベルギー・オランダ3国の国境に近い街です。世界遺産第一号(1978年指定)の由緒あるところだそうです。羽田空港からデュッセルドルフ経由で20時間ほどかかりました。

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Aachen大学へ

今回は、Aachen大学にいる世界的な乳癌の権威、Kuhl(クール)教授に会うためにやってきました。非造影の乳癌MRI検診の可能性を提案するためです。前回のシカゴ行きもそうでしたが、こういった旅行は自腹で来ます。懐には相当イタいのですが、その代わり一切の制約がなく自由に行動できます。まぁこういう時のために日ごろ稼がせて頂いているんだと思うようにしています。

Aachen駅到着は昼の12時。研修医のダニエルくんが迎えに来てくれて、直ちに病院に向かいました。病院の外観は、写真右側のように極めてユニーク。工場かと思いましたがこのようなデザインなのだそうです。そして左側の緑の滑り台のようなものは、ヘリポート(2台分)。ヘリが到着すると右下のスロープを辿って、地下1階のER(救命)に患者さんを搬送するとのこと。

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非造影乳房MRI (DWIBS法=ドゥイブス法)をテストスキャン

到着後すぐに、放射線科を統括するSimone Schrading 先生(↓写真左上)にお目にかかり、MRI室に行きました(その上に、ChairmanであるKuhl先生がいる)。Philipsの一世代前のAchieva 1.5テスラ装置が置いてあります。

みんなで記念写真を撮りました。ちなみに、Schrading先生とDanielくんが持っているKitCutは、宇治抹茶味。外国人に一番ポピュラーとの事前情報で、これをプレゼントに持っていきました笑

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スキャンは直ちに行えました。これは、Examcardというファイルを事前に用意しておけば、インストールのみでセットアップが済むからです。アーヘン大学の装置と同型のものが聖マリアンナ医大ブレスト&イメージングセンターにあるので、福田護教授(印牧義英先生)に許可をいただき、馬野技師にお願いして一緒にテストスキャンを予めしてもらい、条件出しをしてからここに臨んだというわけです。

スキャンは成功

ブレストセンターのコイルは16チャンネル(新型)なのに対し、アーヘン大学のものは4チャンネル(旧式)なので、S/Nが足りるか心配でしたが、全く問題なく4分半できれいな画像が撮影できました。

アーヘン大学では、下のような圧迫デバイス(NORAS社製)を用いて、乳房を軽く圧迫して撮影をします。こうすると頭尾長が短くなって、少ないスライス枚数(=少ない撮像時間)で撮影できるからです。

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しかしこのような特殊な状況は事前に試しておらず、脂肪抑制がきちんとできるか心配でした。しかしご覧のように、ふつうのDWI(拡散強調画像)ではアーチファクトが出るところ、DWIBS法ではアーチファクトなしで撮影できることがわかりました。

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・・・2例とも全く同じような結果が得られたので、とても安堵して、ホテルに送っていただきました。2時間休むとThomasくんが来る予定になっています。

Thomas君来たる

Thomas Kwee(トーマス・クビー(あるいはクベー))先生は、僕がユトレヒト大学で客員準教授として勤務していたときに、大学院生だった人ですが、たぶんユトレヒト大学始まって以来ぐらいの、超ウルトラ級の、論文を書くのが上手な先生です*。

彼は、奥さんと一緒に、オランダ北部から4時間の道のりを、僕に会うためだけにやってきてくれました。いつもそうなのですが、会うとまず研究の話、論文の話、となります。1時間余り、コンピュータを前にあれこれ話したあとに、夕食を共にしました。申し訳ないことに、一泊したら彼らは翌朝すぐに車でまた帰途につきました。

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*通常大学院生は、最低4本の論文を書かないといけないことになっています。学位の本は普通1.5cmぐらいの厚みが必要で、普通の大学院生は、これら4本の論文とともに、本用に文を追加してなんとか「立つ」厚みにします。ところが彼は、在籍中に多分30本以上書いてしまったので、本のサイズに収まらず、やむなく一部の論文だけを掲載しました。それでもとんでもなく厚いものになったのです。彼はいま35歳ですが、Lancet OncologyのReviewerなども務めています。僕は45歳の時、不安に駆られながら、また寂しい気持ちと共に渡欧したのですが、このトーマスくんに巡り合ったことで、人生で最大の宝くじに当たったような経験をすることになりました。それまで行った研究のほとんどが論文になっていなかったのですが、最大瞬間風速は年間に18本(つまり3週間毎に論文が印刷される)に達し、過去の未報告研究が一層されたのです。

 

翌土曜日、DICOM画像を取得

翌日は土曜日なので病院はおやすみですが、熱心なダニエル君は病院に連れて行ってくれました。このたま昨日撮影したデータを、念入りにしっかり吟味してUSBに収めることができました。お礼に、OsiriXを用いてFusion画像を作成することなどを彼に教えたりしました。

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市内観光

その後市内観光に連れて行ってもらいました。

↓世界遺産となっている大聖堂は、掛け値なしの素晴らしさで、ステンドグラスの高さがとても印象的でした。

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↓ヨーロッパの花屋さんはいつも素敵な雰囲気ですね。日本の華やかな花屋さんもいいですが、なんていうのかな、自然な感じ。

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↓「プリンテン」という名前の、平たいパンのようなお菓子が名物なんだそうです。糖質オフが原則なので食べませんでした・・・ (^^;

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日曜日朝:草稿を書いてThomas君に送る

ドイツの朝。ホテルの前にあるお城(シュロス)、また遠くの教会がとても素敵です。

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が、サボってばかりもいられません。月曜日の朝にはプレゼンをするのです。朝カン(朝に行われるカンファレンス、通常最大1時間)のときに設定してもらったので、可能な限り効率的に短くする必要があります。最近は英語のプレゼンも慣れたので、原稿書きはせず喋って練習するだけなのですが、今回は短くカチッとやるために、朝から発表原稿を書き下してみることにしました。こんな風に、スライドのスクリーンショット(まだ日本語)を貼り付けながら原稿を書いていきます。

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2時間ほどで一応完成に至ったので、Thomasくんに送って、直してもらうことにしました。Thomas君は、今日親戚が来ることになっていたはずなので、「深夜までに直して送ってくれたらうれしいよ」と書きました。日曜午前、10時39分のことです。

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ドイツの温泉に行く

・・・というわけで、まぁこれで一段落というわけで、「温泉」に行ってみることにしました。アーヘンは古くは温泉保養地だったようなんです。「CAROLUS THERMEN」という施設があって、そのパンフレットを見るとまさに温泉ぽい。Aachenに50度〜70度のお湯がでている模式図です。

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でこれもパンフですが、てくてくと30分ぐらい歩いて行って参りました。

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行ってみると、まぁ割りとフツーな、ドイツにありがちな温水プールという風情ではありましたが、おねいさんに水泳パンツを選んでもらったりして(半額の17ユーロのやつを買いました)まぁ楽しかったですよ。

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でもって、またてくてくと歩き、市の中心街で、(ドイツだけど)イタリアンレストランでご飯をたべました。ワイン頼んじゃったけどライザップの人には秘密(笑)。

カラマリ・フリット(=イカフライ)が好きなので、メニューになかったけど頼んでみたら作ってくれました。

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Thomasからお返事が来たのは36分後だった

で、4時間ぐらいでホテルに戻って、「そろそろひょっとしたらお返事来たかな〜」と思ったらまぁ大変。36分後にはお返事が来ていました。Thomasくんの仕事はいつもとんでもなく速いです。遊んでいて、もーしわけない。

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こんなふうに直してもらいました。今回は、発表原稿(で論文ではないので)、割りと修正箇所が少ないようです。彼のお陰で、自分でもまぁだいぶなんとかなるようになってきたんですよね。ありがたや。

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スライドの英訳

・・・というわけで、スライドを原稿に合うように直していきます。

スクリーンショット 2017-02-19 22.55.02↑いまココ

・・・というわけです。明日は以下のような予定。どうなることでしょうか・・・

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【その2へ】

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